介護離職問題
今朝の日本経済新聞の社説は,「介護との両立支援は重要な経営課題だ」というタイトルで,介護離職対策の重要性が論じられていました。安倍政権のときから「介護離職ゼロ」は政策課題に掲げられていましたが,なかなか状況は改善していないようです。国民は,まずは育児介護休業法の内容を知り,どのような権利があるかを理解して,必要な人は,この制度を十分に活用するところからスタートしなければなりません。
今年の第46回労働問題優秀図書賞には,介護離職の問題について正面から取り組んだ池田心豪氏の労作「介護離職の構造―育児・介護休業法と両立支援ニーズ」が選ばれました(もう一冊の受賞作は,市原博氏の『近代日本の技術者と人材形成・人事管理』です)。JILPTのHPでは,次のように,同書の概要が紹介されています。
「本書は,現行法が想定する仕事と介護の生活時間配分の問題から守備範囲を広げて,介護者の健康や人間関係の問題など,介護離職につながりうる多様な問題にも着目し,対応可能な両立支援制度の考え方を示しています。多様な両立支援ニーズに対応することによって『介護離職ゼロ』にも貢献しうる政策研究であるといえます。」
私も審査委員として熟読しましたが,まさに概要に書かれているような内容の研究です。具体的な政策提言まではされていませんが,今日の大きな社会問題である介護離職について,きちんとした調査をして法制度の問題や両立支援に向けた課題を,当事者のニーズに焦点をあててあぶりだした点は,労働政策研究として高く評価されるべきでしょう。
ところで,介護離職ゼロのためには,もっとテレワークを増やすことが重要だというのが私の主張です(拙著『誰のためのテレワーク?―近未来社会のための働き方と法』(明石書店)93頁を参照)が,コロナ後の対面回帰のなかで,やや逆風が吹いています。しかし,いまいちど,介護問題にしろ,育児問題にしろ,その抜本的な解決に大きく寄与するテレワークをどのように政策的に推進するかについても,政府には考えてもらいたいです。