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2023年10月17日 (火)

ライドシェアの解禁論義を邪魔するな

 時事通信社の記事で,自民党のタクシー・ハイヤー議員連盟が総会を開き,「ライドシェア」解禁の是非を議論したが,このなかで,盛山正仁文部科学相が「安易なライドシェアを認めるわけにはいかない」と語ったと報道されていました。こんな議連に出席する余裕があれば,文科大臣としての仕事をしてもらいたいと思いますが,盛山氏には期待していただけに,失望感が強いです。
 ライドシェアについては,もちろん安全面への懸念がまったくないわけではありません。「安易に認めるわけにはいかない」というだけなら,そのとおりかもしれません。ただ,タクシーだから安心ということなどまったくありません。私は運転免許がないので,それだけタクシーを使うことは多いです。だから,タクシーについて多少は語る資格があると思っています。これまでの経験でも,道を知らないと思われると,平気で遠回りするような運転手に,被害を受けたことが何度もあります。そこまで行かなくても運転手がほんとうに道をよく知らないために,結果として遠回りされたことなど数え切れません(Londonのプロのタクシーにはありえないことです)。ライドシェアだから,女性の一人乗りに不安があるという意見もありますが,ほんとうにそうでしょうか。私たちは,そこまでタクシー運転手を信頼しているでしょうか。海外のライドシェアでは,運転手の評価が事前にわかるので,むしろ安心度が高いのです。料金も事前に決まっていて,遠回りされる心配もありません。チップ制があるので,運転手には,サービスをよくするインセンティブがあります。これはどれも日本のタクシー会社にはないものです。日本でも,もちろん,信頼できるタクシー会社はありますし,素晴らしい運転手に遭遇したことも何度もありますが,そうでないこともあり,あたりはずれが大きいのです。そもそも,国会議員は,どれだけ自分のお金でタクシーに乗っているのでしょうか。タクシーを全面的に信頼できるという国民がどれだけいるか,一度よく確認したほうがよいでしょう。
 これはライドシェアに安心・安全面で不安があるということへの反論ですが,それよりも,根本的にはタクシー運転手が不足しているという問題をどう考えるかのほうが重要です。海外に実績のあるライドシェアサービスに頼らざるを得ないというのが,現状ではないでしょうか。ここでも,国会議員となると,タクシーを長時間待つという経験をしていないでしょうから,庶民の実感がわからないのではないかという疑念があります。
 国民の日常の移動に大きな困難が生じかけている現状を考えた場合,ライドシェアを,いかに安心できるサービスとして解禁するかという方向の議論こそ進めていくべきです。この面だけは首相に期待しています。

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