« 藤井聡太八冠達成 | トップページ | 藤井八冠の衝撃 »

2023年10月12日 (木)

インターナショナルスクールに流れる親たち

 NHKの「かんさい熱視線」で,106日に,「開校ラッシュ!インターナショナルスクール 日本の教育になにが」という番組をやっていました。大阪でインターナショナルスクールに通う子どもが増えていることが紹介されていました。インターナショナルスクールというと富裕層の子どもたちが行くというイメージですが,いまは参入事業者が増えて,庶民でもなんとか通えるくらいに学費を引き下げているところもあるようです。一方,親の意識としても,英語を勉強させたいとか,子どもに国際的に活躍してもらいたいといった目的だけでなく,とくに若い親たちの間で,子どもに日本の教育を受けさせたくないと考える人が増えているようなのです。こうした親の需要に敏感に反応して,ビジネスチャンスと感じている海外の事業者が増えているのでしょう。とくに大阪は巨大な潜在顧客がいると見込まれているようです。
 いつも言っているように,DX時代・AI時代は教育政策の根本的な見直しが必要です。文科省も手をこまねいているわけではなく,探求型学習を,わずかではありますが,すでに取り入れています(とくに重要視しているようにはみえませんが)。しかし問題は,誰がそれを教えるのかです。現在の教師は,自分自身は,探究型学習の経験がないはずですし,先輩教師たちから教わることもできません。日常の仕事も,どんどん忙しくなっています。これで探求型学習に対応する授業に取り組めといっても無理があります(106日の日本経済新聞の「大機小機」の「教員負担の軽減で必要なこと」では,国会の要請で文科省が実施する実態調査への対応が,教師の仕事を増やしているということが書かれていました)。
 これからは,日本の小学校でやっている授業のうち,基礎的なものはAIに担当させ,人間の教師は探求型授業と呼ばれるものに集中するという役割分担が必要となるでしょう。もちろんDXにより,教師を雑務から開放することも不可欠です。
 ところで,日本人は,人前で自分の意見を言うことを推奨されていません(大学のゼミ型の授業では,このあたりから学生の意識を変えていかなければならないので,たいへんです)。探究型学習というのは,自分のなかに知的好奇心がめらめらと燃え上がり,自分で情報を追い求め,そこから,いろいろな仮説を立て,検証をし,失敗をし,仮説をつくり直すということを繰り返し,その過程において人前でプレゼンをして,さまざまな意見をもらい,それを受けてさらに考え直し,仮説をブラッシュアップしていくというようなことを,ひたすら繰り返す学習なのだと思います。昭和の時代は,そういう作業は,知的遊戯であり,実務に役立たないとして軽視されがちでしたが,現在では,そういうことを言う人はさすがに減ってきていると思います。こうした時代の変化を受けて,教師は,学生の知的活動のよき伴走者になることが求められているのです。人間には,結論を教える(知識を単に伝える)よりも,むしろテクニカルなこと(情報収集の仕方,プレゼンに関する種々のテクニックなど)を教えることが期待されるのかもしれません。あとは個人がAIを活用しながら自力で考えを磨いていくのです。
 冒頭のNHKの番組に話を戻すと,そこに出ていた評論家は,日本の公立学校にも希望があると言っていました。自宅の近くにあって,子どもたちに情熱をもって接してくれる先生がいる学校に無償で通えるということは,世界では決して当たり前のことではなく,その価値は高いというのです。たしかに,そのとおりです。あとは,政府が,インターナショナルスクールに流れる親たちの気持ちを理解し,どうしたらこのような人たち(決して特別な人たちではない)に公立学校に子どもを行かせたいと思ってもらえるかを考える必要があります。もし子どもの近い未来に直結するような教育体制を,カリキュラムと教師という面で,きちんと用意できなければ,インターナショナルスクールに流れる動きはますます拡大することになるでしょう。

« 藤井聡太八冠達成 | トップページ | 藤井八冠の衝撃 »

教育」カテゴリの記事