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2023年10月23日 (月)

秋北バス事件

 本日の学部2年生相手の少人数講義は,秋北バス事件を取扱いました。いまさら秋北バス事件かという感じですが,秋田のバス会社で管理職に導入された55歳定年制をめぐる紛争が,日本の労働法において最も重要な判例と言われる秋北バス事件・最高裁大法廷判決を生み出したのです。これは,ちょっとしたドラマでしょう。まだ法律の勉強をほとんどしていないはずの2年生相手ですので,法学ってこんな議論をするんだということを味わってもらえればと思っていたのですが,結構面白い意見を述べてくれました。多くの学生が反応したのは「合理性」という概念です。「合理性」って曖昧だよねという意見(色川幸太郎反対意見もそのことは強く述べています)と,社会が変化するのだから,こういう弾力的な概念のほうがよいという意見がありました。企業に対して,合理性というような形で制限をかけるのはいかがなものかという,労働法の洗礼を受けていない段階での学生ならではの率直な意見があったり,他方で,この程度のことで合理性があると言って,労働者が退職させられてしまうのはおそろしいといった感想を述べる学生もいました。法廷(多数)意見は,就業規則では一方的な変更を認めるけれど,あとは労働組合をつくって頑張ってねというメッセージを発しているので,それを受けて,やはり労働組合は大切だという組合関係者が泣いて喜びそうな意見を言ってくれた学生もいれば,労働組合ってそこまで頼りになるのかという疑問を提起する学生もいました。定年制についても,いろいろ議論が出てきましたが,定年と雇用保障との関連性からすると,今日のように転職志向が強くなって雇用保障の意味合いが変わってきているなかでは,定年の存在意義もなくなるのではないかという意見もありました。秋北バス事件・最高裁判決は,当時の55歳定年制が合理的な制度であると述べたという意味もあるのですが,その定年制自体が徐々にその役割を終えようとしているのかもしれません。ということで,実質的に初回となる授業から,秋北バス事件を素材に,実にディープな議論ができました。
 改めてこの判決を読み返すと,3人の反対意見(意見としては横田正俊裁判長と大隅健一郎裁判官の連名の意見と色川意見の2つ)の理論的な筋の強さには,改めて感銘を受けました。私の博士論文の原型も,この反対意見にあるのであり,懐かしい気分になりました。重要判例を読み返すと,やはり得るものが大きいですね。 

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