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2023年10月 3日 (火)

ライドシェア解禁の議論の加速化を

 八代尚宏先生から,プレジデントに投稿したという情報をいただいたので,拝読しました(「80代運転手をコキ使ってまでタクシー業界を死守…世界で普及の「ライドシェア」断固阻止する抵抗勢力の言い分」)。私も会員になっている制度・規制改革学会の提言です。
 過激なタイトルですが,書かれている内容は,私がこのブログでも訴えてきたことと方向性は同じです。タクシー業界の人手不足対応で,国土交通省は個人タクシーのドライバーの更新の上限年齢を80歳にまで引き上げました(法人のドライバーは,これまでも年齢制限はなかったそうです)が,高年齢者の免許返納が推奨されているなかで,それと逆行する動きのような気がします。これで国民の安全が守られるのでしょうか。タクシードライバーはプロだから大丈夫ということかもしれませんが,運転技術において,平均的にみて,プロと素人との間に,どれほど大きな差があるかは疑問です。私は免許をもっていないので,乗せてもらう立場からの意見ですが,プロのドライバーでも下手な人はいるし,素人でも上手な人はいます。
 そうなると,そこまでして「プロ」の世界を守って,ライドシェアという形で「素人」が参入することを阻止するのかが妥当なのかという話になります。「プロ」に80歳まで認めるならば,「プロ」も「素人」も70歳以下に限定するという規制のほうが,国民にとっては望ましいのではないでしょうか。そのほうが,安全に運転できるドライバーの裾野が広がり,モビリティの人手不足の解決に貢献するでしょう。
 運転技術には個人差があるのであり,プロであれ,素人であれ,下手なドライバーから被害を受けないようにするためには,いつものように,テクノロジーに期待するところは大きいです。シェアリング・エコノミーの時代において,どのようにライドシェアサービスを育成していくかという視点が大切です。問題もありますが,それは解決可能であることは,八代先生の原稿でも詳しく論じられています。私のような安全重視派からしても,車はどっちにしても危険なものであり,ことさらライドシェアのほうが危険とは思えません(高齢のタクシードライバーのほうが怖いです)。素人ドライバーのかかえる危険性も,それはタクシードライバーとどこまで違うのか疑問でありますし,それについては対策もあるのです。
 「神奈川版ライドシェア」案というのは,タクシー業界にだけライドシェアを認めるというものであり,現実的な選択肢のような気もしますが,そもそもタクシー業界にそこまで忖度する必要があるのかという八代先生の意見にも耳を傾けてもらいたいです。
 ゆくゆくは自動運転にしてもらえれば,人手不足の問題は解消します。でも,あまりゆっくりしていられないと思います。気づけば,タクシーは数時間待ち,バスは計画運休で,私たちの日常生活はストップということが起こりかねません。想像力をもって,早めに対応することが必要です。走りながら,(でも質の高い)議論をするというスピード感覚が必要です。

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