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2023年9月29日 (金)

前川孝雄『部下を活かすマネジメント“新作法”』

 FeelWorksの代表取締役である前川孝雄さんから,『部下を活かすマネジメント“新作法”』(労務行政)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。今回の本は,私が日頃感じていたことを見事に書いてくださっています。本のコンセプトは,本の表紙にも書かれている「上司の悩み スッキリ解決!」ということなのですが,要するに大切なのは,これまでの社会常識が変わってきているということです。
 これからの上司というのは年長で勤続年数が長く,仕事ができるということでは務まりません。いまの上司は,どうしてもかつての自分の上司をモデルとしがちでしょうが,かつての上司のやっていたことは,企業内が「治外法権」とされていた時代のことです。現在では,SNSによる労働法規違反の告発にはじまり,公益通報者保護法により内部告発を是とする風潮が広がるなか,上司が下手なことをすれば,すぐにネットで情報が拡散します。個人情報保護法の背景にあるプライバシー保護は,その重要性を飛躍的に高め,「プライバシー」は部下がいつでも上司に対抗できる「殺し文句」になっています。企業経営においても,ESG投資やSDGなどが浸透して人権を始めとする社会的価値がビジネスと同等の重要性をもつようになり,仕事さえできれば,多少のことは「おめこぼし」という時代ではなくなっています。もちろん,部下との人的な接触は,肉体的なものだけではなく,言葉によるものでも,ハラスメントとされる危険が高まっています。上司には,こうした種々の新たなルールに対応していくことが求められているのです。しかし,これが単に受け身の「対応」で終わってはいけないのでしょう。新たなルールは,良い人材を集めるためであったり,人材にいっそう活躍してもらったりするための手段にもなります。だからこそ,そこにはチャンスがあるということです。上司は上から何かをやる存在ではなく,部下とともに何かをやる存在でなければならないのです。その意味で,上司や部下という上下関係は,もはやないものと考えたほうがよいのかもしれません。
 以上のような雇用の現場の変化をふまえたとき,本書には,いろいろと役に立つ実践的なことが書かれています。また第2部では,経営者へのインタビューが掲載されています。サイボウズの青野慶久社長も登場します(以前に,文藝春秋の企画で,対談させてもらったことがあります。『会社員が消える』出版記念対談)。サイボウズは,私には理想的な会社に思えるのですが,それは青野社長が新しい社会常識をもって,きわめて真っ当な経営をされているからであり,そのことは本書でのインタビューからもわかると思います。
 上司世代だけでなく,これからの会社はどうあるべきかを考えたい人にも参考になる本です。

 

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