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2023年9月 1日 (金)

棋士の服装規定

 防災の日です。いまは南海トラフ震災前という時期ですが,地震のことをすぐに忘れがちです。物的な準備はそれほどできていません(今日の時点では水と非常食くらいでしょうか)が,心の準備はしているつもりです。どうせ来るなら早く来てほしいという気がする反面,弱い地震が少しずつ来てくれたらと思っていますが,そんな都合よく行くわけありませんね。
 話は変わり,昨日の永瀬拓矢王座のことで書き忘れていたことがありました。それは彼が和服を着用していたことです。これまでは,最初だけ和服で,すぐにスーツに着替えるということをしていたと思うのですが,どうも服装規定で王座戦は原則として和服着用に変わったようです。これが王座戦だけのルールなのか,よくわかりませんが,タイトル戦で現在和服を着ないのは永瀬王座だけなので,彼を狙い撃ちにしたルールということでしょう。いまは,永瀬王座以外はみんなタイトル戦で和服を着ているので,これが慣行です。労働法でよく出てくる言い回しでいうと,慣行を就業規則で明文化したというのと近いようなものですね(服装とは関係ないですが,有名な例としては,賞与の支給日在籍要件の慣行を明文化した就業規則の合理性を肯定した大和銀行事件・最高裁判決(1982年10月7日)があります)。
 雇用労働者であれば,業種によっては,服装の強要を言われると,争う余地がありそうですが,棋士は個人事業主という扱いなので,争うことは難しいでしょう。棋士の対局姿は,Abemaでライブで世界中に報道されます。日本古来の文化という意味のある将棋において,一種の興行ですから,やはり和服着用が求められるのは仕方がないと思います。とくにタイトル戦という最高峰の戦いでは,スポンサー(王座戦は日本経済新聞)にも配慮する必要があるでしょう。スーツでは,ちょっとタイトル戦を軽視しているのでは,という不満が出てくるかもしれません(私のようにスーツも和服ももっていない人間は,正装ができないので,正式な場に出ることができないのですが)。
 もちろん,永瀬王座にも言い分はあるのでしょう。和服ですと,日頃着慣れていないので集中できず,良い将棋が指せないということなのかもしれません。彼が若いときなら大目に見ようということもあったかもしれませんが,今期防衛すると名誉王座という永世タイトル保持者となるくらいの大棋士となってきているので,やはりそれなりの責任感をもってもらう必要があるということなのでしょう。たんに勝負に勝てばよいというだけではなく,それ以外のことにも気を配って大人になってほしいということでしょうか。日本将棋連盟の会長に新たについた羽生善治九段の意向も働いているのかもしれません。そんなプレッシャーもなんのその,永瀬王座は,見事に和服を着こなして先勝しました。その精神力は半端でないです。

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