外国人との付き合い方
外国人に対する特別料金の設定が話題になっています。JRグループが,外国人が利用する「ジャパン・レール・パス」の値上げをするそうです。日本が豊かであったころの大盤振る舞いの維持が難しくなってきたということでしょう。日本は安い国であるという評価はすでに定着しています。もはや外国人に特別な優遇措置を講じる必要はないということでしょう。中国人から,日本は安い国と言われると複雑な気持ちであり,私たちの世代からすると隔世の感があります。日本経済新聞の9月25日で編集委員の石鍋仁美氏は,「長く日本の観光の手本はフランスだった。国民がバカンスを楽しみ外国人はその土台に乗る。今後は外国人に頼って成長する新興・途上国のマーケティングに学ぶ場面が増えそうだ」と書いていました。こういう現実を受けとめなければならないのでしょうが,若い世代は別に何も違和感がないかもしれません。
かなり昔ですが,Veneziaのレストランで,外国人用のメニューとイタリア人用のメニューに直面したことがあり,それは書かれている言語が英語かイタリア語かというのではなく,料金も異なるものでした。あまり良い気分はしませんでしたが,そういうものかという気もしていました。私たちは日本という豊かな国から来ているのだから,これくらいはいいよね,という「上から目線」の発想でした。理屈のうえでも,私人間の契約においては,それぞれ好きな契約条件を定めて合意できるのであり,いやならその店で食事をしなければよいのです。もっとも英語メニューのほうが高いという情報は,普通は入手できないので(私はたまたま英語のメニューのあと,イタリア語のメニューをもらったのでわかってしまったのですが),知らないうちに同じ料理でもイタリア人より高い値段をつけられていたというのは,騙された感もありますが,何か特別な規制がないかぎり,契約というものは,そういうものだと私は思っています。しかし,そういうことをやっている国や店は尊敬されなくなり評判を落とすのであり,実際,イタリアでもそういう経験は,個人的には1回だけでした。しかし途上国に行けば,そういうことは稀ではないような気もします。
もちろん,日本企業はそういうことをしないでしょう。いま日本企業がやろうとしていることは,「松竹梅」方式で,選択してもらい,「松」は思い切り高額で高品質のサービスにして,富裕層にしっかりお金をつかってもらおうということです(その主たるターゲットは,中国人の富裕層でしょう)。私たちは「梅」でがまんすることになりますが,それぞれの懐事情で払えばよいということです。
ただ為替レートは変動することを考えると,企業には,地に足の付いた企業戦略とはどういうものかも考えてもらいたいです。企業というのは,基本的には,私たちの暮らす共同体の一員として,共同体の資源をつかいながら事業を営んでいるのであり,その生み出された商品は,共同体のメンバーに還元されていくべきものではないかと思っています。豊かな外国人の客に頼ると,雇用が維持されるということはあるのかもしれませんが,消費者目線では,外国人に尻尾をふって,貧乏な日本の消費者に冷たかった企業のことは,決して忘れないでしょう。
資産運用特区もそうですが,アメリカ人に誉めてもらいたいがために,気前のよいことをやり,もし税金まで優遇するようなことをすれば,外国人に尻尾を振りすぎた首相として,後世,軽蔑されることになるでしょう。アメリカ人にもっと来てもらうと,国民の資産も増えるからよいのだということなのでしょうか(この点で,Singapore はモデルとしてよいのでしょうか)。むしろ,日本の企業への投資を,いかにして日本人がしやすくするかということを,もっと考えてほしいです。Warren Buffett氏のような人の言葉に日本企業の株価が大きく左右され,個人投資家の貴重な資産も揺れ動くというようなことでは困るのです。
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