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2023年8月13日 (日)

法学の課題

 前に書いた大学改革の話の続きですが,文理融合などを考えていくだけでなく,法学のなかにおいても,いろいろ検討すべきことがありそうです。
 AIの進化により,たんなる法律に関する情報の提供はもちろん,法解釈などの技術的な側面もAIを活用することになるでしょう。法律を一定の政策目的のためにどう使うかという法道具主義的なアプローチにおいても,AIが大いに活用されることになるでしょう。そうなると,法学研究は,より原理的な問題に傾斜し,実用性からやや遠くなっていくかもしれません。現時点ではまだAI社会に対応した新たなルールというような観点から,実用面に傾斜した研究が多いように思います(社会からのニーズも,こういうものが強い)が,徐々に基礎法的な議論が中心になっていくでしょう。
 一方,DX時代の一つの特徴は,学問の境界線をまたがるような論点が次々と出てくることです。法学内部でも同じであり,研究機関としての大学の法学部は,もはや民法,刑法などの○○法の専門というような分け方をすることは適さず,分野横断的に総合的な関心をもっている研究者が必要となると思います。民法はわかるが,労働法はよくわからないというようなことでは,おそらくこれからはダメなのでしょうね(Vice versa)。
 現在では,基本科目とされている民法,行政法などにおける一般性のありそうな議論も,実は現場に近い応用系の科目では,すでに独自の発展を遂げていることがあります。例えばデュアル・エンフォースメントやトリプル・エンフォースメントという議論(刑事的手法,行政的手法,民事的手法の二つまたは三つの活用)については,実は労働基準法はトリプル・エンフォースメントの代表例です。ダブルトラック(行政手続と民事手続)をめぐる議論についても,不当労働行為救済制度では,ずっと議論されてきているものです。もちろん労働法の議論が,具体的にどのように貢献できるかはわかりませんが,すでに多年にわたる実務経験の蓄積があり,そこでいろんな問題もかなり論じられているので,それをみないで議論をするのは非効率でしょう。
 労働法は特殊な分野であるので,あまり参考にならないという思い込みと,よくわからない分野なので首を突っ込むことができないという消極姿勢があり,他方で,労働法側にも遠慮があったり,どうせ周辺科目であるという屈折した感情もあったりして,分野をまたがった交流があまりなされてきませんでした。しかし,労働法は特殊とはいえ,世の中の多数の人がその適用を受けているのであり,この分野の理論を摂取していかなければ,適切な法理論の構築は難しいでしょう。
 いまフリーランス政策が話題になっていますが,これが,労働法と経済法のどちらの土俵でやるのかが議論の対象となっています。学問的に整理されていないため,フリーランス新法は両者をそのままくっつけてしまったもの(理論的には未熟なもの)になっています。既存の分野をまたがる知見を結集し,それを統合して,新たな理論を構築する必要が出てきていると思います。

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