最低賃金
中央最低賃金審議会で,地域別最低賃金改定の目安が決まりました。全国平均でみると1002円で,これは過去最大の41円の引上げだそうです。JILPTの理事長となられた藤村博之さんが会長で,明治大学の小西康之さんが横に座っていて,二人はテレビで何度も映っていました。この審議会は大詰めのときは,とくにたいへんです。全国の経営者や労働者の注目の視線を浴びながらのもので,ほんとうにご苦労様でした。
最低賃金で重要なのは,「目安に関する小委員会」の報告書です。小委員会は,本委員会も含め公労使三者構成ですが,今回の目安についても,例年どおり,労働者委員,使用者委員のどちらも公益委員見解に反対をしました。
報告書には,「公益委員としては,今年度の目安審議については令和5年全員協議会報告の1⑵で『最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり,今後の目安審議においても徹底すべきである』と合意されたことを踏まえ,加えて,『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023 改訂版』及び『経済財政運営と改革の基本方針2023』に配意しつつ,各種指標を総合的に勘案し,下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめた」とされ,それが今回の報道されている最低賃金の目安であり,「目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした」と記載されていました。
例の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023 改訂版」と「経済財政運営と改革の基本方針2023」に「配意」したということで,政治の圧力が相当強いなかで,研究者の公益委員はかなりつらいこともあったのではないかと思われますが,よく委員を引き受けて頑張っておられると思います。
労使の合意が得られなくても議論をすることに意味があるということかもしれませんが,それは昭和時代のノリかもしれません。労使のトップが徹夜も辞さずに徹底的に団体交渉をし,決裂したのち,公益委員が仲裁裁定するというようなイメージを想起させる最低賃金の決定方法を変えていくべきなのかもしれません。この分野もAIを活用して効率的に決めていくことも考えてよいのではないでしょうか(毎年,同じようなコメントをしているかもしれません)。働き方改革は,ここにも適用してよいでしょう。さもなくば,そのうち公益委員のなり手がいなくならないか心配です(余計なお世話かもしれませんが)。
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