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2023年8月16日 (水)

竜王戦の挑戦者決まる

 王位戦の第4局は,佐々木大地七段が一矢を報いました。佐賀の嬉野温泉の和多屋別荘での王位戦第4局は,藤井聡太王位(竜王・名人・七冠)が敗れ31敗となりました。後手番の藤井王位は,中段に浮いていた飛車が狙われ,うまくさばけなかったようで,最後は佐々木七段が13手詰めを逃さず仕留めました。藤井王位としては1週間後の第5局には勝って,すっきりと八冠に向けて永瀬拓矢王座へのタイトル挑戦に臨みたいところでしょう。
 竜王戦の挑戦者決定戦三番勝負は,伊藤匠六段が,永瀬王座に連勝して,藤井竜王への挑戦となりました。20歳の同級生対決です。昨年のNHK杯では藤井竜王が勝っていますが,同年齢だけにライバル心は強いでしょう。相手はいまや七冠としてそびえ立つ存在(竜王戦が始まるときは八冠になっているかもしれません)ですが,伊藤七段(竜王戦挑戦で七段に昇段しました)にとっては,一気に近づけるチャンスです。竜王戦のすごいところは,クラスが下でも竜王を取ることができるシステムであることです。伊藤七段は,今期は竜王戦は下から2つめの5組(スタート時は段位も五段でした)で,所属する組を決めるランキング戦で瀬川晶司六段,石田直裕五段,井上慶太九段,藤森哲也五段,服部慎一郎五段に勝って優勝し,準決勝で勝った時点で4組昇級を決めて(前年度も6組で優勝している),竜王戦での2期連続の昇級という昇段要件を満たして六段に昇段し,ついで挑戦者を決める決勝トーナメントでは,6組優勝の出口若武六段,4組優勝の大石直嗣七段,15位の広瀬章人八段,14位の丸山忠久九段,1組優勝の稲葉陽八段に勝ち(前年度の決勝トーナメントでは稲葉八段に敗れていたのでリベンジを果たしました),そして13位で勝ち上がってきた永瀬王座に2連勝し,合計12連勝で挑戦権をつかみました。5組の棋士が挑戦するのは初めてのようです。藤井竜王も5組のときに優勝していますが,挑戦にまでは至りませんでした。前述のように,制度上は,下から勝ち続ければ挑戦権を得て,さらに竜王位をとることもできるのですが,実際には不可能に近い難しさです。しかし伊藤七段はあと一歩のところまで来ました。
 順位戦は1年に一つしか昇級できないので,蓄積が重要なのですが,竜王戦は勢いで行けるところがあります。なお伊藤七段は,順位戦は3期目ですが,最初のC2組は1期で抜けたものの,次のC1組は91敗の好成績ながら,順位が下だったので昇級をのがしています(9連勝で迎えた最終局に,阪口悟六段相手にまさかの敗北を喫して頭ハネされました)。今期も初戦を負けてしまい,21敗と苦しいスタートです。今期は順位が1位といえ,2敗してしまうとかなり苦しくなるでしょう。
 ということで順位戦はやや苦しんでいますが,ここまでの勝ちっぷりはすごいものがあります。第1局のときには伊藤七段は21歳になっていますが,それでも藤井竜王と二人あわせて41歳という驚くべき竜王戦になりました。2020年デビューの伊藤七段は,2016年デビューで史上5人目の中学生プロになった藤井竜王より4年遅れのプロ入りですが,それでもこの若さで竜王戦挑戦は見事です。次代の将棋界を担う二人の対決が,いまから楽しみです。かつては竜王戦といえば,渡辺明九段でしたが,すっかり景色が変わりましたね。

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