« タクシーの人手不足 | トップページ | 竜王戦の挑戦者決まる »

2023年8月15日 (火)

栗山メモ

 台風が来ましたね。大型の台風です。昼間は,カーテンを開けて,木や電線が揺れるのをみていました。自然の威力はすごいです。自然に敬意を払い,おとなしくしていなければなりません。こんな日でも外で仕事をしなければならない人は,自ら進んでやっているのなら仕方がないですが,会社の命令でやらされているとすれば気の毒です。いやなら辞めたらいいというのではなく,本人に抽象的な同意があったとしても,具体的に命令でやらせてよいことの限界があるのではないかという視点が必要です。具体的なケースで,ぎりぎりいっぱいのときに抵抗できる権利を労働者に与えるということが,労働法では重要となります。
 話は変わり,昨日,NHKプラスでWBCJapan監督の栗山英樹氏の監督時代のメモをたどりながら,優勝に至るまでの軌跡をたどった番組を観ました。逆算することや非情な采配が重要であることが強調されていたのですが,実は構成に無理があるという感じがしました。栗山氏は,トーナメントの戦い方にはプロ野球選手は慣れていないので,社会人野球の監督らに話を聞いたとして,そこで逆算や非情の重要性を教わったと述べていました。またプロ野球の名将,三原監督の「一つの場面で勝とうとするなら,監督非情さと冷厳さが要求される」という言葉も座右の銘にしたようであり,このフレーズが何度も番組のなかで登場します。ただ,逆算の重要性というと,WBCに入ったところで,予選からどのように逆算して選手起用したかということが重要となりそうなのですが,そこはあまり出てこず,最後に大谷かダルビッシュが三振をとって優勝するというイメージがあったというようなぼんやりした話になっています。栗山氏が,WBCにそなえて,いろいろスケジュールを立てて準備したことはわかりましたが,それはここで言われている逆算とは違う気がします。また非情な采配というのも,あまりよくわかりませんでした。結局,ダルビッシュと事前に,調子が悪ければ使わないよという会話をしたところだけで,これは勝負ではあたりまえのことなので,これが非情な采配とはいえないでしょう。むしろ,決勝で8回にダルビッシュを投げさせたりしているのは温情采配のように思えますし,準決勝のメキシコ戦で,それまで大不調であった村上にそのまま打たせたところも,結果として決勝打になりましたが,温情采配のようにみえます。村上のところについては,栗山氏は,彼を打たせるしかなかった理由をきちんと説明していましたが,それはそのとおりかもしれませんが,非情な采配という話ではありませんでした。結局,大谷を呼ぶことができて,大谷が十分に活躍してくれたから優勝できたのであり,監督が非情であったわけでも,逆算が優れていたわけでもなく,大谷を呼ぶことができたことこそ彼の貢献ではなかったかというようにも思えました。もちろん,ほんとうはそうではないのでしょうが,番組が,強引な構成をしてしまったために,かえって栗山氏に迷惑なものになったのではないかという印象を受けました。
 非情な采配というのは,人情派の監督が自分をいさめるときに使う言葉かもしれません。勝負である以上,本来,冷静に選手の力を見極めて使うのは当然のことでしょう。阪神の岡田監督は,選手のことをいろいろ考えているようではありますが,勝負になったら,選手を冷静に「将棋の駒」のように使っています。前に島田選手のエラーに対して温情的と書きましたが,これは実は表面的なコメントで,彼を選手として活躍してもらうためには,ここで本人のやる気に影響してしまいそうなコメントはしないほうがよいという冷静な計算によるものでしょう(メディアをつかって,うまく監督のコメントが伝わるようにしています)。重要なのは,非情さではなく,冷静さであり,勝負に徹するこだわりなのでしょう。逆算についても,岡田監督はこれまで見事にやっています。トーナメントだけでなく,ペナントレースでも必要なことなのです。シーズン前半はあまり勝ち負けにこだわらず,選手の消耗を防ぎながら,どの選手が終盤の苦しいときに戦力になるかを冷静に見極めて起用をしてきました。ケガによるアクシデントも織り込み済みであり,気づけば先発投手陣は余ってしまうほどですし,リリーフ陣はしっかり休ませながら,疲労がたまらないようにしています。監督にとって,連勝することはほんとうは嫌なようです。勝ちゲームだと良い投手を連投させるので,疲労がたまってしまい,その後に戦力ダウンにつながることをおそれているのです。10連勝しても,8連敗したら,貯金は2です。21敗を6回やれば,貯金6です。こちらのほうが,ときどきある負け試合に,勝ちゲームに使う選手を休ませることができ,長い目でみれば,このほうがたくさん勝てるということを考えています。これが逆算の発想です。
 捕手も梅野の死球離脱は痛いですが,今年の阪神は捕手2人制でした。まさか梅野のケガまで予想していたわけではないでしょうが,危機管理ができていたといえるでしょう。外野についても,森下を開幕から使って,プロの厳しさを教え,不調になってからは二軍に落としたあと,再度の昇格後は,3番にどっしり座らせ,いまや最も頼りになるバッターになっています。前川もいまは2軍ですが,最後には戦力になるとみているでしょう。内野は大山を1塁に固定することで,守備の技術が高まり,とくに佐藤からの不安定な送球も大丈夫という安心感を与えています。ショートについては,木浪の力を過小評価していたようですが,恐怖の8番として,彼の力を十分に発揮させています。中野と木浪の二遊間がここまでピタリとはまるとは予想していなかったかもしれませんが,これも矢野監督時代にはなかったポジション固定の効果であり,その効果は終盤にいくほど強く表れてくると思います。この岡田監督の戦術こそ,逆算の発想によるものなのでしょう。
 栗山氏も名監督だと思いますが,番組ではその良さがあまり伝わらなかったのは残念です。それとノートが手書きなのが気になりました。それをなんとNHK側が,手書きの大きな付箋紙のようなもので整理して,部屋全体に貼っているという,あまりにも昭和的なものを見せられて,驚いてしまいました。膨大な手書きの文章を,アナログ的な手法で整理するのが2023年の話だと考えた場合,複雑な気持ちになりました。かえって野球の未来が心配になりましたね。

« タクシーの人手不足 | トップページ | 竜王戦の挑戦者決まる »

スポーツ」カテゴリの記事