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2023年8月 4日 (金)

ビッグモーターと雇用問題

 ビッグモーター問題は,えげつなさ(方言か?)のレベルがひどすぎて,報道によるかぎりでは,もはやまともな会社の体をなしていないような感じがします。前に今回の内部通報は,公益通報者保護法の効果ではないよね,ということを書きましたが,むしろ公益通報者保護法違反があったようです。2020年の法改正(20226月施行)で,「事業者は,……公益通報者の保護を図るとともに,公益通報の内容の活用により国民の生命,身体,財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため,……公益通報に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない」(112項)など,公益通報体制整備義務が定められており,それに違反した場合には,内閣総理大臣(消費者庁長官が受任)は事業者に対して,報告を求め,または助言,指導もしくは勧告をすることができ,勧告に従わなかった場合には,企業名公表の制裁が定められています(15条,16条)。ビッグモーターは,ここまで大きく報道されているので,企業名公表の制裁などは,いまさら意味がないように思えますが,それはともかく,早速,公益通報体制整備義務が注目されることになった点は,消費者庁は良かったと思っているかもしれませんね(もちろん被害を受けている「消費者」は気の毒なので,その点では良かったは言ってられないでしょうが)。上記の規定は,内部告発(公益通報)への対応を誤ると,たいへんなことになるぞという企業への威嚇効果としては,少し弱いところがあると思いますが,公益通報者保護法自体は,刑法や業法などによる制裁のきっかけとなる事実の通報を促進することに主眼があるので,公益通報者保護法違反に対する制裁はこの程度でよいのかもしれません。
 ところで,一般に,非上場会社で,一族だけで株式を保有していて,経営も一族でやっている場合,所有と経営が一致し,外部の株主の声を気にせず思う存分経営ができるという点ではメリットがあります。他方で,よく言われるように,外部からのガバナンスが効かずに,コンプライアンスの軽視など,会社のもつ「負」の部分が露呈してしまうおそれもあります。会社は,営利社団法人で,その営利とは,株主利益を最大化することを意味するのですが,その前提にあるのは,会社は社会の一員としてルールを守り,責任をはたすということがあるのです。もちろん,こうした前提をいちいち持ち出さなくても,社会の一員としてルールや責任の遵守をしていない会社は持続可能な成長は見込めず,(中長期的には)株主の利益を損なうことになるので,そうならないようにするという自浄作用が働くことが期待されるのですが,所有と経営とが一致していると,それがうまく機能せず,とくにオーナー一族の倫理観の欠如というようなことがあれば,何が何でも目先の営利(一族の利益)の追求をということになり,結局,破綻に向かってまっしぐらとなるのです。
 ビッグモーター社が直ちに消滅することはないでしょうが,ビッグモーターの看板のままでは事業はたちいかなくなるでしょう。もちろん,中古車の販売や修理への社会的ニーズは大きいでしょうから,この事業がなくなることはありません。オーナー一族は,いまのうちに,株式を売って経営権を譲渡して資産を確保するかもしれません(今後の損害賠償請求で,最終的にはもっていかれるかもしれませんが)。
 その一方で,従業員はたいへんでしょう。経営権の譲渡により,うまく雇用が継続すればよいですが,ここに外国の投資ファンドなどがからんでくると,雲行きが怪しくなるかもしれません。このようなことを考えると,この会社は規模も大きく,経営破綻があれば社会的影響が大きくなりそうなので,厚生労働省は早めに対策を考えておいたほうがよいでしょう(もちろん同社のパワハラ問題など,雇用関係を前提とした労働問題についても,違法なものについては,きちんと対処していく必要はあります)。

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