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2023年8月22日 (火)

会計年度任用職員

 前期の学部の労働法の授業で,公務員について1回分をあてました。これまでは特別職の非常勤職員のことが問題となっていたのですが,2017年の地方公務員法(地公法)の改正で,2020年度以降,会計年度任用職員という制度が設けられて,地方公務員法333号での任用要件が厳格化され,これまで広く同号で採用されていた人のうち,「専門的な知識経験等に基づき助言,調査及び診断等の事務を行う者」以外は,会計年度任用職員として任用されることになったことから,少し問題状況が変わりました。非常勤職員の勤務関係は不明確なものとされており,一般職の非常勤職員が,地公法17条に基づき行われてきた以外に,特別職の非常勤公務員としても任用されるなど,整理が必要となっていました。2017年改正は,そうした問題に終止符を打つためのものと考えられますが,労働法の観点からは,これまで再任用拒否などをめぐり紛争となることが多かった特別職の非常勤職員が,一般職の会計年度任用職員に移行したことにより,問題状況がどうなるのかが気になるところではあります。もっとも,労働契約法は,もともと公務員には適用されない(211項)ので,その点だけみれば,改正前後において変わりはありません。
 会計年度任用職員は,任期は最長1年ですが,その更新はありえます。法文上は,まず「会計年度任用職員の任期は,その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める」(地公法22条の22項。最長は1年ということ)とされ,「任命権者は,会計年度任用職員の任期が第2項に規定する期間に満たない場合には,当該会計年度任用職員の勤務実績を考慮した上で,当該期間の範囲内において,その任期を更新することができる」(同条4項)とされており,ここでは更新とは,当該会計年度内のものに限るようです。しかし,会計年度をまたがることが認められていないわけではなく,それについては,新たな「採用」と位置づけるようです。ということで,地公法上は,「採用」と「任期の更新」があるのですが,私の理解が間違っていなければ,通常の意味での更新はすべて(新規の)「採用」となるということです。
 いずれにせよ,同一の職員が,同一の職で会計年度任用職員として継続して就労することはありえそうなので,再任用拒否(雇止め)となったときには,やはり問題が出てきます。これについては,特別職非常勤公務員に対するのと同じような処理になる可能性があるのですが,一般職と特別職で何か違いがあるのか,一般職となると,労働法から余計に遠くなりそうでもありますが,このあたりのことはよくわからないところがあります。公務員労働法研究者のホープといえる早津裕貴さんの『公務員の法的地位に関する日独比較法研究』(日本評論社)は,労契法211項による全面適用除外は,違憲無効とする余地も生じるとしています(255頁)。そこまで言うかはともかく,少なくとも会計年度任用職員は,一般職としての採用ということにして,地位が明確になったとか,期末手当が支給されるようになったとか,そういうことで満足せずに,より根本的な整理が必要でしょう。公務員の勤務関係のprivatizationを進め,どこまで労働法の領域に取り込めるかは,理論的にも興味深いテーマといえるでしょう。そうみると,違憲無効かはさておき,労契法211項は,ちょっと嫌な規定で,いろんな議論の芽を摘むような気がしますね。

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