鶴光太郎『日本の会社のための人事の経済学』
鶴さんから,『日本の会社のための人事の経済学』(日経BP 日本経済新聞出版)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。『人事労働法』(弘文堂)という本を書いていた私は,『人事の経済学』という書名に親近感を覚えました。経済学というと国境に関係のない普遍性がある学問分野というイメージですが,ここでは「日本の会社のための」という断りがわざわざ入っていて,日本には独特の人事システムがあり,それを経済学の立場から分析したということだと思います。
その内容については,JILPTの濱口桂一郎さんの「ジョブ型」の議論を意識されてはいるのでしょうが,会社人事の実務において「ジョブ型」というものを,どう具体化していけばよいかということを原理から解説したのが本書でしょう。
ジョブ型については,私もいろいろ書いているので,ここでは書きませんが,本書のはしがきで書かれているように,「最近,特に着目されるようになった人的資本経営において重視されている,副業・兼業,社内公募制などは,ジョブ型雇用がそのベースになければならないことは案外認識されていない」とするならば,本書のように,ジョブ型についてきちんと解く本がなければいけないでしょう。
終章では,「従業員からみた「ミライのカタチ」」が書かれていて,最初は,鶴さんのことが書かれていると誤解して読んでいて,妙に親近感をおぼえていたのですが,なんか変だなと思って確認したら,20年後の未来予想をした架空の話でした。でも私自身は,そこに出てくる20年後の社員(プロ型社員としてのキャリア,テレワークの定着した職場,プライベートに重点を置く家庭・家族観)とほぼ同じような感覚で,すでに生活・労働をしていて,これは20年後ではなく,現在の会社員の感覚にあてはまるものではないかなと思いました。
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