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2023年6月15日 (木)

島田陽一『雇用システムの変化と労働法政策の展開』

 島田陽一先生から『雇用システムの変化と労働法政策の展開』(旬報社)をかなり前にいただいていましたが,しっかり読んでから紹介しようと思い,時間がかかってしまいました。全部読み切れたわけではありませんが,あまり遅くなってもと思い,ご紹介します。
 唐津博先生のご著書もそうでしたが,古希を迎えた先生方が過去の業績をまとめたものは迫力があります。きちんと一つの本として整理できるというのは,それだけしっかりした研究を系統立ててやってこられたことの証であり,私のように関心がどんどん広がって,常に前に書いたものを壊しながら進みたいという人間には,とても無理なことです。
 島田先生の今回の本は4部構成で,第1部が「日本型雇用慣行の変容と労働法政策の課題」,第2部が「非正規雇用と労働法政策」,第3部が「労働時間法制の立法政策と今後の展望」,第4部が「労働法制の再編と生活保障法の展望」です。島田先生といえば,政府関係の仕事もされていて,労働政策に明るい方です。この本に収録されている諸論文も,そうした先生の研究の方向性が良く表れているように思います。非正規雇用や労働時間法制がまさにそうしたもので,また生活保障法の構想も島田先生が開拓しておられるものです。テーマについては政策面で新しいものを扱うという点で先進性があり,一方でその研究内容は,バランスがとれていて信頼性が高く,後輩の私がいうのも失礼かもしれませんが,非常にセンスの良い研究だと思います。島田先生と同じようなスタイルの先生は,なかなか出てこないでしょう。
 古稀という年齢は,まだこれからです。最近,大学のキャンパスで,傘寿をむかえた名誉教授が,図書館で本を借りている姿をお見かけしました。研究意欲はまったく衰えておらず,目線も鋭いです。自分の20年後を考えるととても自信はありませんが,いまの高齢社会では,古希はたんなる通過点という感じですね。島田先生のような堅実な研究をされている方は,お世辞ではなく,傘寿のときにも,すぐれた業績を収録した今回のような本を出されるのではないかと思います。

 

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