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2023年6月28日 (水)

Wagner

 ドイツのあの偉大な作曲家の名前ではなく,ロシアの民間軍事会社の名前(ワグネル)です。プリゴジン(Prigozhin)が率いる会社で,ロシアは,そこの傭兵を使って戦争をしているわけです。これを正規軍に組み入れようとしたところ,プリゴジンが反旗を翻してモスクワに進軍しようとしましたが,制圧されたのか,自主的に撤退したのか,最初から仕組まれていた茶番劇だったのかはよくわかりませんが,ベラルーシへの亡命(?)ということになって,この乱は終息しました。傭兵の反旗というと,世界史を選択した人は,西ローマ帝国を滅亡させたゲルマン人の傭兵隊長であったオドアケル(Odoacer)の名前を思い出す人も多いでしょう。プリゴジンは,外国人傭兵ではない点はオドアケルと違いますし,そこが同じロシア人どうしでの殺し合いを回避した理由なのかもしれません。
 それはさておき,私の感覚では,どう考えても,この民間軍事会社のビジネスはまともなものではなく,NHKが,何のためらいもなく,ニュースで彼の動向を克明に報道していることに違和感をおぼえます。もちろんウクライナ戦争の帰趨に影響するという点で,ワグネルの動きは報道する価値はあるのですが,プリゴジン個人のことをここまで取り上げる必要があるのかは疑問です。日本の若者に,民間軍事会社というビジネスが「表のもの」として完全に認知され,(特段の大義なく)戦争で人を殺すことを仕事とする傭兵に志願する若者が増えても困るでしょう。もちろん,それも自己決定だということかもしれませんが,私の周りにそういう志願をする人がいれば,おせっかいかもしれないけれど,やめるように説得を試みるでしょうね。
 一方で,自衛隊の志願者が減ってきているという話があります。先般の自衛官候補生による乱射事件の背景には,自衛隊側において採用活動でのチェックを入念にする余裕がないという事情があるのかもしれません。今回の事件で,親がこわがって,子が自衛隊に入隊することをいやがり,自衛官希望者が減る可能性もあります。もしそうなると,岸田政権が目指す軍備増強の行き着く先は,徴兵か傭兵ということになりかねません。いまは日本もアメリカ軍に頼っているという点では,傭兵を利用しているようなものかもしれませんが,国防においてアメリカにいつまでも頼れないとなると,(徴兵制の導入は無理でしょうから)ほんとうに民間軍事会社の手を借りなければならなくなるかもしれません。
 プリゴジンのことを興味本位にとりあげるのではなく,こうした金で雇った民間人を使って行われてきたこの戦争をどう評価したらよいのか,これからの国防はどうあるべきか,NHKには,こうしたことを考えるための視点を提供するような報道をしてもらいたいです。

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