キヤノンショック
今朝のNHKのニュースで,「キヤノンショック」という言葉が出てきて驚きました。キヤノンの株主総会で,経団連の会長でもあった御手洗氏の取締役再任が過半数ぎりぎりであったというニュースです。あわや否決というところまで行ったということです。その理由は,この会社には女性の取締役がいないということです。会社トップの再任を拒否するという形で,このことに異議を申し立てた株主が多かったということでしょう。アメリカの大手議決権行使助言会社ISSが,取締役会に女性がいない企業には,経営トップの取締役選任に反対を推奨するという助言をしていたことが影響したようです。
たしかに上場企業の取締役に,ずらっと男性の高年齢者が並ぶというのは,昭和の時代ならともかく,現在は違和感があります。この違和感は,たんに男性・高年齢であるということだけからくるのではなく,素直に考えて,この変化の時代にもっと若い層(といっても40代も含みます。それだけ経営陣は高齢化が進んでいるのです)や女性の力を借りずに経営をやっていけるのかという疑問からくるものです。何も経営陣に女性や若い層がいればよいということではないのですが,同性で年齢が近い同質的な人ばかりで集まっていて,この変化の時代に新しい発想が生まれてくるはずがないでしょう。人材のダイバーシティが乏しい企業に将来性はないでしょう。
男性社会では,男性に迎合した女性が評価されるということはあるのですが,それではダイバーシティの意味はあまりありません。これは私自身も気をつけるべきことなのですが,自分と同じような考えをもつ人をつい高く評価してしまうものの,それは単に自己満足だけかもしれないのです。といっても良いものは良いのですが,ここは思考実験をしたらよいのです。自分とまったく違った考え方をしてみたらどうなるだろうか,です。私は昔,判例百選において,自分とまったく違う考え方で解説を書いたことがあります。判例百選は教材で学術的な文献ではないので自説を書くところではありませんし,自説を書く場ではないということは執筆要領で釘をさされていたと思います。ということで,ある判例の論点について,自説は少数説だから,通説の立場で書けばよいと思ったのです。これは私には思考実験となったのですが,新鮮な気分ですし,やってはいけないことをしている背徳感もありました(他人が自分に乗り移って書いている感じ)。でも,こういう多重人格的実験を意識的にやってみることは視野を広げるのによいことなのです(あえて判例百選でやる必要もないのですが)。
男性経営陣も紀貫之の「土佐日記」ではありませんが,「男もすなる経営といふものを女もしてみむとてするなり」と,女の気分になって経営日記でも書いてみればどうでしょうかね。
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