育児とテレワーク
育児とテレワークの相性の良さは,ずっと指摘してきたことですが,ようやく政府もその方向に動こうとしているのかもしれません。今日の日本経済新聞は,「育児期,働き方柔軟に」というタイトルで,厚生労働省の会議で,育児と仕事の両立が一段とやりやすくなるよう制度を盛り込んだ報告書案が出されたと報じていました。おそらく,この会議とは「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」であり,報告書案をみると,「子が3歳になるまでの両立支援の拡充」として,「現在,努力義務となっている出社・退社時間の調整などに加えて,テレワークを企業の努力義務として位置付けることが必要である。」とし,また「短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに,テレワークも追加することが必要である。」と書かれています。前者は,育児介護休業法24条1項2号で,子が1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者について,育児休業に関する制度か始業終業時刻変更等の措置に準じるものを講じることなどが努力義務として定められているので,これにテレワークも追加するということだと思われます。後者は,3歳に満たない子を養育する労働者について認められている,所定労働時間の短縮措置について,例外的にその適用対象外となる場合に,フレックスタイム制,始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ,事業所内保育施設の設置運営などの便宜供与のいずれかを講じなければならないとされています(育児介護休業法23条2項,同法施行規則74条2項)が,その選択肢にテレワークを追加することだと思われます。
また報告書案では,「子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充」として,「業種・職種などにより,職場で導入できる制度も様々であることから」として,短時間勤務制度,テレワーク(所定労働時間を短縮しないもの),始業時刻の変更等の措置(所定労働時間を短縮しないもの。フレックスタイム 制を含む。),新たな休暇の付与(子の看護休暇や年次有給休暇など法定の休暇とは別に一定の期間ごとに付与され,時間単位で取得できるもの) などの柔軟な働き方を措置する制度の中から,事業主が各職場の事情に応じて,2以上の制度を選択して措置を講じる義務を設けることが必要である」とされていて,これは育児介護休業法24条1項3号の強化をめざすものと思われます。
ということで,テレワークが,育児期の労働者に対するサポートの手段として認められるのは望ましいと思いますが,「異次元の対策」というなら,もっとテレワークの地位を高めてもいいでしょうね。少子化の直接的な対策となるかはさておき,育児期の労働者にとって在宅勤務のテレワークは最も助かるものと思われるので,育児期の労働者にテレワークを認めた事業者への補助金(同僚の負担増に対する手当として使えるようにするなど)を認めたり(もしかしたら,そういうのはすでにあるのかもしれませんが),所定労働時間の短縮かテレワークの請求を選択的に認めたりすることもあってよいように思いますが,どうでしょうね。
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