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2023年6月16日 (金)

AIと教育

 今朝のNHKのニュースで,教育現場でのAIの活用というテーマがとりあげられていました。AI時代の教育の話かと思っていたら,そうではなく,教員の仕事ぶりをAIで分析するという話でした。大阪・箕面市の彩都の丘学園を取材し,ベテランの教員の授業風景をカメラで撮影してAIが分析するところが紹介されていました。子どもたちが授業中に下を向く度合い,教員と生徒がどれだけ話をしているか,教員がどれくらい移動していたかなどがデータで示されます。その教員は,導入部で前回の復習についての話が長すぎるという分析結果が出て,そのことを反省していました。こういうのは,授業の改善に使えたり,後輩教員の参考になったりするという点では有用ですが,教師側からは,これが評価に使われると困るという声もあるということでした。そうでしょうね。労働者の監視というのは,もともと微妙な問題です。人間は機械のようには働けないのであり,監視はいきすぎると人格的利益と抵触するところがあります。とりわけ遠隔での監視は不気味であり,ストレスもかかります。AIが活用されるとなおさらでしょう。一方,今回はカメラが教室に設置されているので遠隔監視とはいえないかもしれませんが,分析しているのが人間ではなく機械という点をどう考えてよいかが難しいですね。
 AIによる監視は,職種によっては事故防止につながるし,働きすぎのチェックなど健康確保にもつながります。ただし,後者はプライバシーの問題が出てきます。監視は,昔は労働法の問題でしたが,現在では個人情報保護法とも関係してきます。これもAIのリスクの一つといえますが,総論としては,他のリスクと同様,使い方を誤らないように適切なコントロールが必要というところが出発点となります。
 ところで,教育現場とAIというとき,最初に書いたようなAIと教育も重要です。いまはChatGPTにどう向き合うかということに追われているでしょう(感想文に利用したらダメとかなど)。ただ,もう一歩先をみて,教員も学生もいっしょにChatGPTを使いながら,これだったらどんなことがAIにできて,人間はこのAIとどう分業していけるだろうか,というようなことを語り合う授業が必要だと思います。

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