藤井竜王・名人八冠への道(王座戦挑決トーナメント)
羽生善治九段が,日本将棋連盟の会長となりました。彼はこういう仕事をやらないと思っていましたが,あえてこの激務を引き受けたようです。現役ばりばりのときにこの職に就くのはきつく,谷川浩司十七世名人も,会長になってからの成績は急降下してしまいました。年齢だけではないと思います。羽生九段はタイトル挑戦をするなど,かつてほどではありませんが,まだ第一線で活躍していますが,50歳を超えて(52歳),将棋界のためということもあって会長になったのでしょう。
その羽生九段は,今日の王座戦の挑戦者決定トーナメントで,現在9連勝中で絶好調の若手の齋藤明日斗五段に勝ちました。羽生九段は,先日のNHK杯でも,渡辺和史六段に勝ち,B級1組の順位戦では,昇級してきたばかりの勢いのある大橋貴洸七段に勝っています。勢いのある若手を次々と打ち負かしています。ひょっとして藤井竜王・名人(七冠)に勝てるとすれば,この人しかいないのではないか,という気もしてきました。
その藤井聡太竜王・名人(七冠)は,同じ王座戦の挑戦者決定トーナメントで,村田顕弘六段に勝ちましたが,大苦戦でした。Abemaでの生中継があったので,最後のほうをみていましたが,藤井竜王・名人は絶体絶命のピンチに追い込まれていました(AIの評価値では村田六段が90を超えていて,ほぼ必勝の状況でした)。これで八冠の夢が途絶えたと多くの人が思ったことでしょう。村田六段はかつて関西四天王の一人にあげられていた俊英(残りの3人は,豊島将之九段,糸谷哲郎八段,稲葉陽八段)で,ジャイアントキリングとなったかと思いましたが,たった1手の緩手をとがめられ,最後は龍切りから入って,さらに飛車捨てという派手な23手詰めで藤井竜王・名人が勝ちました。結局,AIの評価値は,人間の場合は時間に追われて十分に考えることができないという状況になると,当てにならないということです。時間攻めも含めて,この最後の詰みを狙っていたのでしょうね。藤井おそるべしです。それほどの鮮やかな逆転勝利でした。これで,いよいよ永瀬拓矢王座への挑戦に向けて,あと2勝となりました。次は羽生九段との勝負です。現在の羽生九段の勢いからすると,勝敗は五分五分ではないかと思っています。