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2023年6月 9日 (金)

キャリア官僚と東大生

 今朝の日本経済新聞で「霞が関『東大卒』10年で半減」という見出しの記事が出ていました。総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)出身大学別合格者数で,合格者2027人中,東大が193人と最も多いものの,過去,最小人数だそうです。調べてみると,2012年度の試験では合格者1326人中410人,2013年度は1753人中454人,2014年度は1918人中438人が東大出身であったことを考えると人数も比率も大幅に低下しています。東大生の霞が関離れは顕著であり,ある面からは良いことといえるかもしれませんが,少し心配になります。
 東大生がどうかということよりも,学力的には十分に試験を突破できるにもかかわらず,あえて忌避している学生が増えているということだとすると,それは記事で書かれていたように,「長時間労働やサービス残業の多さから霞が関には『ブラック職場』との呼び名も定着した」という,働き方改革が十分に浸透していない事情と関係しているのでしょう。
 議員が無意味に威張っていて,それに奴隷のごとくこき使われるような働き方は,プライドの高い東大生には耐えられないことなのかもしれません(対議員に対するこのプライドは,鼻持ちならないようなものではないでしょう)。さらに時間主権が奪われている働き方は,若者には魅力がないのであり,自分の力を発揮する場は,規制改革の動きから民間にもたくさんあるということを考えると,あえてブラックな職場を選ぶ必要はないということでしょう。国家公務員総合職の仕事は,やりがいのある大きな仕事ができるので,本来は志のある若者が憧れてしかるべきものなのですが,どうもメディアなどで報じられているところをみると,残念な働き方が多いので,そこに行く気にならないのもよくわかります。
 もちろん東大生がキャリア官僚にならなくても,他の大学の出身者がなればそれでよいということかもしれません。東大生だから優秀で,東大生が減ると,国家公務員総合職の質が下がるというのは,東大関係者の大きな思い上がりなのかもしれません。むしろ東大生の比率低下は,東大生的な優秀さが,国家公務員の仕事には求められないことの現れにすぎないとみれば,ポジティブに受けとめることもできるでしょう。ただ,私は,東大生の良さは,私大のような強い学閥を作らないところにあると思っていて(実際にはマジョリティなので学閥があるような印象はありますが,結束力はそれほど強くないと思います),省益重視は困ったものですが,省益よりも出身大学の学閥重視になってしまうと,もっと困ったことにならないかという危惧があります。考えすぎでしょうかね。
 いずれにせよ,世はまさにChatGPT時代に突入するわけであり,知識の豊富さ,情報処理の速さなど,東大生的な頭の良さは,あまり社会には役立たなくなる可能性があります。新たな官吏養成の仕組みが必要なのかもしれません。議員の相手は優秀なAIロボットに任すことができれば,議員レクというようなブラックな労働から解放されます。そうなると国家公務員としての本来の大きな仕事に従事できるという魅力がクローズアップされるのではないかと期待しています。

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