何を報道するか
数日前まで,学校の教諭の事後強盗殺人事件について,NHKのニュース番組は,連日,かなり詳しく報道をしていました。本人は黙秘しているそうなので,警察の見立てについてリークを受けて流しているということでしょう。事件の凶悪性や衝撃の大きさから世間の関心は高いものの,まだ犯人と決まったわけではない段階(推定無罪)で,少し過剰に一方的な報道をしているような気がします。この容疑者が犯人である可能性は高いのかもしれませんが,ワイドショーではなく,NHKのニュースなので,もう少し冷静中立的な報道姿勢をとったほうがよいと思います。そう思う理由は,Yahooニュースでみた日刊GENDAIデジタルの記事が,東京オリンピックの汚職事件の公判で,検察が事件の背後に森元首相がいることを示す供述調書を読み上げたことなどから,森元首相を不問に付してよいのか,という問題提起をしていたからです(「森喜朗元首相の「接待漬け」が五輪汚職公判で明るみに…検察の不問は許されるのか」)。私が見落としていただけかもしれませんが,NHKのニュースでは,この汚職事件について,青木会長らの裁判の結果は簡単に報道されていましたが,公判で出てきた供述などをきちんと追った報道はされていなかったように思います。公判前の容疑者に関する警察側の一方的な情報がどんどん報道されているのに対して,国民にとってより重要な公共性が高い元首相の汚職への関与という問題についての扱いの小ささはバランスを欠いていると思います。
真実はよくわからないのですが,少なくとも報道の姿勢としては,ワイドショー的な関心で番組を選ぶのではなく,公共性の高い政治家の問題には,積極的に多くの情報を提供するということであるべきでしょう。権力に弱いということでは困ります。国民の間には,NHKの報道するニュースが公正かつ適切に選択されていないのではないかという疑問が渦巻いていることでしょう。
このほか,ウクライナの戦局についても,重要なことではありますが,軍事的なことについて必要以上に細かい情報を出したり,また爆撃シーンの映像を次々と出したりするなど,子どもが観ている時間帯であることに配慮がないことが気になります(ケガをしている映像などがなければよいということではありません)。
報道するニュースの取捨選択などについて,根本的な検討が必要だと思います。ニュース以外は良い番組が多いのに,どうもニュースの質が気になるのです。NHKの番組審議会は,こういうところにも,しっかり目配りしてもらいたいです。
« 大学教員任期法4条1項1号該当性 | トップページ | テレワーク実施努力義務 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 桃色争議(2023.10.21)
- 何を報道するか(2023.05.15)
- 「鎌倉殿の13人」のラスト(2022.12.24)
- 映画「罪の声」(2022.12.11)
- 『鎌倉殿の13人』も,いよいよ大詰め (2022.11.29)
「社会問題」カテゴリの記事
- 大学から研究者が消える?(2024.09.02)
- 南海トラフ地震臨時情報とは何だったのか(2024.08.18)
- 国防軍(2024.08.16)
- 兵庫県民として辛い(2024.07.18)