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2023年5月14日 (日)

大学教員任期法4条1項1号該当性

 大学において介護福祉士養成課程の担当をしていた講師が,任期法71項に基づく無期転換ルールの10年特例の対象者(同法411号該当性)かが争われた羽衣学園事件で, 2023118日の大阪高裁の判決は,地裁判決を覆して,特例対象となることを否定し,5年での無期転換を認める判決を下しました。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律における同様の10年特例の対象者となる研究者について,研究業績を考慮して採用したとしても,実際に従事している業務が教育だけである非常勤講師(ドイツ語の授業担当の講師)は研究者に該当しない(10年特例の対象ではない)とした裁判例があり,これについては,前に紹介したことがあります(専修大学事件・東京地判20211216日。その後,20227月6日の東京高裁判決も地裁判決を支持しています)が,任期法については要件が異なっていて,とくに41項の3つのカテゴリーのなかの一つ「多様な人材の確保が特に求められている教育研究の職」(1号)は広い解釈もありえることから,10年特例の対象となる余地もあり,実際に1審はこれを肯定していました。今後,混乱が生じないようにするためには,1号該当性をどう解釈して運用していくべきかについて,政府は早急に指針を示すべきではないでしょうかね。
 「人事労働法」的には,これは,次のように考えていくことになります。大学は任期について規則を制定することが義務付けられているので(任期法52項),あとは,その規則の適用においては,納得規範(拙著『人事労働法』(弘文堂)18頁)の適用で処理することになります(なお任期法上は,任期を付けて任用することについて労働者の同意が明文で要件とされています[4条2項])。もちろん規則制定について,どこまで大学側に裁量を認めるのかという問題はありますが,私の「標準就業規則」と同様の発想で,政府が標準的な規則について定めて,1号に該当する職をデフォルトとして示し,各大学でその範囲を追加するのであれば「標準就業規則の不利益変更」と同じ手続をふむことになります(「標準就業規則」などの概念については,拙著37頁)。簡単にいうと,政府が規則内容についてのデフォルトを設定し,何もしなければそれが規則内容となるものとし,その範囲を増やすのであれば,過半数の支持を得て,少数者には誠実説明(無期転換ルールの特例となることについて)をして,規則内容を変更すること(拙著301頁も参照),そして,具体的にこの規則を個々の教員に適用する場合には納得同意を得ること,という流れになります。

 



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