名人戦第3局
先般,名人戦第3局がありました。渡辺明名人に藤井聡太竜王(六冠)が挑戦していますが,3局目は名人が意地をみせ,これで名人からみて1勝2敗となりました。後手の藤井竜王(六冠)は,角切りの攻めが少し無理気味であったようで,優勢に立った名人が手堅く寄せきりました。このレベルになると,少しの悪手も許してもらえない感じですね。名人は少し調子が上がってきているでしょうか。
王位戦の挑戦者は,挑戦者決定戦において,佐々木大地七段が,羽生善治九段を破り,棋聖戦に続いて,藤井六冠へのダブル挑戦を決めました。佐々木七段にとって人生の大勝負でしょう。なかなかタイトル挑戦という機会はめぐってきません。何度もタイトル挑戦ができる棋士というのは本当に一握りです。
棋士のピークはどこかという議論はありますが,たとえば2月に早逝した中田宏樹九段(九段は追贈)は,26歳のときに生涯唯一のタイトル挑戦をしています(王位戦で当時の谷川浩司王位に挑戦し2勝4敗で敗れています)。佐々木七段は27歳で,タイトル挑戦時には28歳になっているでしょう。一番油が乗り切っている時期で,もしタイトルを取ることができれば藤井六冠の八冠を阻んだ男として,名を残すことになるでしょう。2つ取れば,歴史的偉業となるでしょうが,さてどうなるか。
ちなみに,三浦弘行九段は,いろいろ話題のある棋士ですが,あの羽生九段の七冠を最初に終了させた男として歴史に名を残しています(棋聖を奪取し,それは彼の現時点での生涯唯一のタイトルです)。
羽生九段は,佐々木七段に敗れたとはいえ,あと一歩で挑戦というところまで迫り,レジェンドとしての存在価値を十分に見せました。王位リーグにも残り,さらに王将戦でもリーグに残っており,なお第一人者の地位にいることは驚きですね。