AI超え?
名人戦の第2局は,藤井聡太竜王(六冠)が,渡辺明名人に勝ち,2連勝となりました。刻々と史上最年少の名人と七冠の誕生のときが近づいています(最短で5月22日)。第2局も,藤井竜王(六冠)は何度か長考していましたが,終わってみれば快勝でした。素人目には,名人の2七香成で,飛角の両取りになっており(相手の大駒のどちらかを必ず取れる),またもう片側には9九龍がいて藤井玉は挟撃されているようにもみえたのですが,そこで藤井竜王(六冠)は「両取り逃げるべからず」の格言どおり,しかも成香が利いている2六に桂を打って相手の金をとりにいくという攻めの手を指したところが,本局のハイライトでした。この桂は放置すると,王手で金がとられるので,たちまち渡辺名人は劣勢となります。しかし,この桂を成香で取ると,飛か角のどちらか取れる状況を自ら解消することになり,悔しい手となります。ここで渡辺名人は成香は動かさず,金を逃げて桂を取りに行く順を選びましたが,その後,藤井竜王(六冠)は攻めを継続し,名人は飛車をとることはできましたが,結局,飛車を使うことがないまま投了に追い込まれました。藤井竜王(六冠)の2六桂は,AIの評価値も揺れ動く難解な手でしたが,もはや彼はAIを超えている,という声も出てきています。AIはすごいですが,とびきりの人間なら,まだAIに負けないかも,と思わせるような将棋でした。藤井竜王(六冠)は,渡辺名人相手なら,ものすごく力がでるようであり,ちょっと名人が気の毒になってきました。名人が割りとあっさり投了したのも,こりゃ勝てないと脱帽した印象も受けました。プロどうしの戦いで,相手に勝てないと心から思ってしまうと,戦う前から負けているようなものなのでしょうが……。
棋聖戦は,佐々木大地七段が,永瀬拓矢王座に勝って,初のタイトル挑戦が決まりました。初戦はベトナムのダナン(一度行ってみたいと思っていたところです)で開催されるそうですが,藤井棋聖はタイトル戦が続く中,体調を崩さないようにしてほしいと思います。
王位戦の挑戦者決定リーグは,紅組は羽生善治九段が順調に勝ち星を伸ばし,残りの2局は永瀬拓矢王座と豊島将之九段との対戦です。あと1勝すれば,プレーオフ以上は確定となります。白組は,佐々木大地七段が4連勝で,プレーオフ以上は確定しました。藤井竜王(六冠)へのダブル挑戦も視野に入ってきました。
藤井竜王(六冠)が名人をもし獲得し,叡王などのタイトルを防衛すれば,残されたタイトルは,永瀬拓矢王座のもつ王座だけとなります。王座戦は,決勝トーナメントに16人が残っており,順調にいけばベスト4は,羽生九段,藤井竜王(六冠),渡辺名人,豊島九段となりそうです。夢の八冠の可能性は十分にありますが,タイトル戦の過密スケジュールのなかでの体調維持が,最大の敵かもしれません。