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2023年3月 6日 (月)

レジオネラ菌問題に思う

 福岡の老舗の温泉で,標準値の3700倍のレジオネラ菌が発見されたという報道が出ていました。3700倍というのが,どれくらいの危険性を意味するのか,よくわかりませんが,年に2回しか湯を変えていないということを知り,ゾッとしました。この温泉が特殊なのか,他の温泉も同じようなものなのか,よくわかりませんが,業界の評判を著しく下げる行為です。私は温泉大好きとはいえ,日本の温泉旅館は高くて,なかなか宿泊することはできませんが,衛生管理が不十分となると,いっそう行く気が失せます。大丸別荘が特殊なことかもしれないので過剰反応するのはどうかという気もしますが,温泉は日本の大事な文化なので,とにかく業界あげて信頼回復に努めてほしいです。
 ところでレジオネラ菌の怖さを知ったのは,以前に紹介したことがある安部二『日本怪死人列伝』(扶桑社文庫)のなかで,元高鉄山の大鳴戸親方とそのタニマチの橋本という方が,同じ日に同じ病院で死亡したという事件(?)で,安部氏が二人の死因をレジオネラ菌によるものと推理していたのを読んだときです。二人は大相撲の八百長の告発をしようとしており,口封じのために何者かに殺害されたという噂があったのです(いまでも,その噂はあります)が,安部氏は,二人が一緒にソープランドに行って,そこでレジオネラ菌に感染したことが原因だと述べています。安部氏の推理が当たっているかどうかはともかく,どうも基礎疾患があれば危ないということは確かなようです。実際,レジオネラ菌の事故は,温泉や公衆浴場などでときどき起きていますし,死亡事故もあるようです。ソープランドに行って感染して死んだというような例では,本人は誰にもそんなところに行っていたとは言わないでしょうから,感染源が不明のままであることも多いかもしれませんね。
 今回の事件は,体調不良になった人が医療機関にかかり,レジオネラ菌が出てきたので,保健所が乗り出してきたのですが,「旅館側は湯の交換頻度や塩素注入は適正だと説明した。さらにこの後,10月の自主検査でも菌は基準値以下だったと県に届け出た」ということのようです(https://www.tokyo-np.co.jp/article/232952)。これは悪質であり,今日のニュースでは,刑事告発がなされる方向のようです(https://news.yahoo.co.jp/articles/dcc568a2ed36ed022bf42930a4a28e54bbf36aa9)。やむを得ないでしょう。
 本来,こういうことは,温泉の従業員の内部告発に期待したいところです。そうなると公益通報者保護法の出番となるのですが,通報対象事実になるかが,すぐにはわかりません。虚偽報告は,温泉法281項違反となって,416号による罰則がかかり,温泉法は公益通報者保護法の別表に記載されている法律に該当するため,通報対象事実となるといえそうですが,これが正しいかはよくわかりません(虚偽報告がどの法律との関係で出てくるのかがネットで検索しても出てこなかったので,自信はありません)。これから通報しようとする行為を入力すれば,通報対象事実かどうかを答えてくれるチャットボットがあれば助かりますね(弁護士への相談は,普通の人には心理的にハードルが高いです)。私のような呼吸器が弱い人間が安心して,温泉につかれるようになるためにも,従業員のみなさんの勇気ある行動が必要です。そのためにも公益通報者保護法が,使い勝手のよいものになってもらう必要があるように思います。このことは,前にも書いたことがですが,温泉の湯の交換頻度など内部告発ががなければ,被害者がでるまでは明らかにならないでしょうから,改めて強調しておきたいと思いました。

(* その後,報道によると,今回のケースは,温泉法違反ではなく,公衆浴場法違反が問題となったようで,同法6条1項に基づく虚偽の報告があったことについての刑事訴追であるようです(同法9条)。なお,公衆浴場法も,公益通報者保護法の通報対象事実に関係する法律に含まれています)。

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