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2023年3月10日 (金)

名人戦挑戦は藤井竜王

 先日の棋王戦第3局は劇的な最後でした。評価値が100となったので,藤井竜王の勝利を確信してお風呂に入って出てきたら藤井竜王が負けていたので,驚きました。あの正確な寄せの藤井竜王が詰みを逃しました。おそらくテレビ局なども六冠の速報テロップを出す準備をしていたと思われますが,まさかの大逆転です。
 中2日あけて,広瀬章人八段とのA級(名人戦挑戦)のプレーオフでは,素人がみていても全く意味がわからない難しい戦いでした。こちらは見事に藤井竜王(五冠)が勝ち,渡辺明名人(棋王)への挑戦を決めました。これで谷川浩司十七世名人の史上最年少名人の記録に挑戦することになります。
 順位戦は,B2組はすでに昇級者3人が決まっているなかで,谷川十七世名人が,ここまで全勝で昇級をすでに決めている大橋貴洸七段を一ひねりしました。先日の王座戦での徳田拳士四段に続き,好調な若手相手の快勝であり,嬉しいです。鋭い踏み込みが復活している感じもします。これで今期の順位戦は55敗で終わりました。来期は昇級を目指して頑張ってもらいたいです。
 C1組は,ちょっとした事件がありました。全勝でトップを走っていて,他棋戦でも絶好調な伊藤匠五段は,順位戦も9戦全勝で二期連続昇級の一歩手前でした。しかし昇級したばかりなので順位が低く,81敗に3名いるので,この3名が全員勝って,自分が負けると,91敗で4人が並び,順位の低い伊藤五段は昇級できないことになります(昇級できるのは3名)。とはいえ,最終局の相手は,27敗で降級点争いをしていた阪口悟六段で,今期の成績やこれまでの実績を考えても,ほとんどの人は伊藤勝ちを予想していたでしょう。ところが,阪口六段が意地を見せたのです。そして,なんと8勝で追いかけていた3人が全員勝ってしまいました。ということで伊藤五段は頭ハネをされて昇級を逃しました。1敗しただけで昇級を逃すのは不運ですが,仕方がありません。かつて藤井竜王にも同じことがありました。来期は順位が上がるので,しっかり昇級に向けて頑張ってほしいです。
 B1組もちょっとしたドラマがありました。92敗でトップの中村太地七段は,勝てば昇級ですが,負けると,83敗で追う佐々木勇気七段と澤田真吾七段の結果次第となります。中村七段の相手は羽生善治九段です。まず2228分に中村七段は投了しました。中村七段の受けに回った手が弱気で,羽生九段が快勝しました。レジェンドが大きな壁となりましたね。この時点で佐々木七段と澤田七段が勝ちそうな感じだったので,中村七段は悔しい頭ハネとなりそうでした。澤田七段の相手は三浦弘行九段で実力者ですが,今期の調子からも,澤田七段が勝てる見込みは十分にありました。佐々木七段は,過去5連敗と苦手にしている屋敷伸之九段が相手で,しかも屋敷九段は降級がかかっているので必死となることが予想されました。まず澤田七段は,三浦九段相手に,少し無理な攻めをして,結局,相手の攻めを呼び込んでしまい必敗の情勢となりました。澤田七段は諦めきれなかったようで,指し続けましたが,2336分に投了となりました。澤田七段は,勝てば昇級だったのですが,無念の敗戦となりました。この時点で,中村七段の昇級が決まり,また佐々木七段も勝ち負けに関係なく昇級が決まったのですが,それを知らない佐々木七段は,屋敷九段の猛攻を受けて,1分将棋のなか,一手間違えれば負けるというギリギリのところで戦っていました。しかしなんとか逃げ切り,ついに2348分に屋敷九段が投了となりました。屋敷九段は,その前に久保利明九段が千田翔太七段に負けていたので降級は免れ,久保九段が無念の降級となりました。結局,B1組は,佐々木勇気七段と中村太地七段が,晴れてA級昇級で八段となりました。プロの誰もが目標とするA級棋士になった二人に,心よりおめでとうと言いたいです。中村(太)新八段は,羽生九段の壁を感じながらも,昇級できた運を活かして,A級で活躍してもらいたいです。藤井竜王のデビュー以来の連勝を29で留めた男として有名な佐々木(勇)新八段ですが,今期はNHK杯でも決勝に進出しているなど,徐々に実力を発揮しており,来期は四強(藤井,渡辺,永瀬拓矢王座,豊島将之九段)に割って入るような大活躍をしそうな予感がします。

 

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