献本御礼
唐津博先生から,『労働法論の探究―労働法の理論と政策』(旬報社)をお送りいただきました。どうもありがとうございました。はしがきを拝見すると,古稀を迎えられて,一区切りとして,これまで公表されてきた論文をまとめられたようです。収録されているものは,すでに読んだことがある論文ですが,改めて拝見すると,唐津先生は労働法の伝統的な考え方に忠実に,手堅い議論をされていることがわかります(それゆえ,少し面白みがないところもあるのですが,論文とはそういう面白みを追求するようなものではないということでしょう)。はしがきでは,ご自身の議論の基本的スタイルを,「憲法を基礎づけるデモクラシーの理念のもとに整備,展開されるべき労働関係・労使関係の法理論と法政策・法制度の相互作用・調整を構想して,個人の自由・自立と自律・自治を起点かつ基点とする労働法ルールの可能性を探る,というものである」と書かれています。「個人の自由・自立と自律・自治を起点かつ基点とする」というところに特徴があるかもしれませんが,この基本的な考え方にはまったく異論はありません。ただ,これをどのような方向で具体的に議論を展開していくかによって,いろいろ立場が分かれていくのでしょうね。唐津先生には,結果として,私とは学説的に相容れないところが多いのですが,拙著を丁寧に紹介していただいたこともあり,よき理解者であったと(勝手に)思って感謝しています。かつて関西労働法研究会のあとの飲み会で,原因は忘れましたが,何か学問的なことで,顔を真赤にして若手に説教していた姿が思い出されます。学問に熱い情熱を注いでこられた唐津先生も,もう古稀だと思うと,ときの流れは早いなと思わざるを得ません。
もう一冊,唐津先生も共著者となっている,浜村彰・唐津博・青野覚・奥田薫子『ベーシック労働法(第9版)』(有斐閣)も,著者の皆さんからお送りいただきました。ありがとうございます。第9版というのはすごいですね。「シンプル・イズ・ザ・ベスト」というコンセプトで執筆されたと書かれていますが,内容も充実していて,十分に専門的な学習のための基本書として活用できると思います。定評ある安枝・西村のプリマ・シリーズに近いタイプのような気がしました。
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