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2023年3月25日 (土)

男性の育児参加と絵本のジェンダーバイアス

 先日の日本経済新聞の「大機小機」で,少子化対策として,男性の育児参加の推進が必要ということが書かれていました。そこにあるように若者の意識は変わってきていて,ワーク・ライフ・バランスへの配慮がない企業は敬遠されるであろうというのは,そのとおりだと思います。
 ところで,政府の人たちは,子どもたちのもつ絵本を読んだことがあるでしょうか。そこには驚くほど古典的な「家事や育児は女性」を前提としたストーリーが,日本のものも海外のものも関係なく,描かれています。こういうものを子どもたちは読み聞かされて育つということを知っておいたがほうがいいでしょう。もしかしたらバリバリ働いている人は,なかなか子どもにゆっくり絵本を読んであげる時間がなく,保育園に任せてしまっているのかもしれませんが,少しでも絵本を読んでいると,すぐに大きな違和感をおぼえることでしょう。男性の育児参加を進めるうえでの支障とまでは言えないかもしれませんが,男性が子どもに読んであげる絵本のなかでの男性不在ぶりを感じると,なんとなく気持ちが盛り上がらないということもあるでしょう。一例として,Pat Hutchins作の『The Doorbell rang』(日本語版の題名は『おまたせクッキー』)という本がありますが,人種の平等性への配慮はあるのですが,クッキーを焼くのはお母さんとお祖母さんという前提(性別役割分担?)で,大人の男性が出て来ない話です。家事は女性であることに何も疑問がないかつての時代の話が読み継がれているのでしょうか。この絵本自体は,とてもよい内容で素晴らしいです(算数の勉強にもなります)が,時代感覚が古い感じがしますし,同様のことは多くの古き良き絵本にみられます。
 少子化対策は,前に書いた不妊治療への助成(20224月から保険適用がされてずいぶん改善されたといえますが,まだやれることはあると思います)以外にも,意外なところに盲点があって,やれることが眠っているかもしれません。金銭をばらまくことだけではなく,もっと知恵を集めてみてはどうでしょうか。金銭的なことが必要かと問われれば,誰でも必要と答えるのですが,それにとどまらず,実は思わぬところに男性育児の阻害要因があって改善できることがあるかもしれないのです。官僚や政治家の男性に育児経験者を増やすことこそ,最も効果的な少子化対策かもしれませんね。

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