日本企業の将来
昨日の日本経済新聞の「Deep Insight」(梶原誠氏が担当)の『「世界の50社」,消える日本』は,興味深く読ませてもらいました。私は日頃から,日本の企業が創造的破壊をし,革新していくことができるかについては悲観的で,インタビューや講演で話すときには,日本の組織の硬直性とその前途の暗さを嘆いています。とくに創造的破壊のために不可欠の前提であるデジタル技術の活用ができているか,それに適した人材を育成し,活用できているか,という視点でみた場合に,日本はかなり厳しい状況にあるように思います。
記事のなかで,花王がユニチャームを追い抜いたことについて,両者の逆転は「日本の国力に対する読みとスピード感の違い」に起因するというアナリストのコメントが紹介されていました。日本の国力は着実に低下し,それにスピード感をもって対応した企業とそうでない企業との差が現れているということでしょう。
また,コンサルティング会社のドリームインキュベータがコロナ後の世界を予測した報告書の内容も紹介されていました。報告書は,コロナ後は元の社会に戻るという楽観論を否定し,「デジタル化を筆頭に,それまで先送りしてきた課題が露呈するので変化を10年前倒しすべきであること,社会の前提が変わるので業界の構造も一変すること,顧客の価値観の変化に合わせた世代交代が避けらず,若い人や新興企業はチャンスを迎えること」というメッセージを発していると紹介されていました。この報告書の言っていることは,基本的には賛成です。私からのメッセージは,コロナは,これまでのDXの到来を早めただけで,DXによる社会の変化はコロナ前から起きていたこと,この変化は今後,加速化し,産業構造やビジネスモデルは根本的に変わり,それに対応できない企業は退場せざるを得ないこと(行政,医療,教育などがDXに対応できなければ,日本は途上国並みになる可能性があり,すでにその兆候があること),人材面では新しい価値観(本物のSDGs)をもった人が登場し,営利追求を基本とする資本主義自体が見直されるであろうこと,というものです。
梶原氏は,「世界の顔である卓越した50社から日本企業の姿が消えている光景を今こそ想像すべきだ。見たくない現実はそこまで来ている。」と結んでおられますが,まったく同感です。
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