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2023年1月24日 (火)

賃金格差の懸念と教育の重要性

 今日は神戸の平野部でも雪が積もりました。寒い日となりましたが,テレビでは東電の電気代値上げのニュースが出ていました。関西電力も時間の問題でしょう。すでに電気代はびっくりするくらい上がっていて,雪が降って寒くても,できるだけ暖房は抑え気味にしたいと思っています。
 春闘が始まり,政府も賃上げの要請をするポーズはとっていますが,中小企業などでは無理なところもあるでしょう。賃上げは,本来,労働市場の需給関係で決まるので,需要が多いデジタル人材は市場メカニズムにより賃金が上がります。スキルが劣り,単純業務しかできない人は供給過剰となりがちなので,賃金は上がらないでしょう。この構造を変えることは,政府が介入しても限界があるでしょう。
 一方で,若者が大企業に入社しても,つまらない仕事ばかりさせられると言って辞めていく例が増えていると,今朝のNHKのニュースが伝えていました。ブルシット・ジョブ(bullshit job)は,大きな問題です。スキルが上がらなければ将来のキャリア展望が開けてこないことがわかっている若者は,大企業に入社して期待しているのは,自分のスキルアップなのです。終身雇用を期待しても,スキルが上がらないまま組織の一員としてやっていくことには不安を感じているのでしょう。だから,できれば汎用性のあるスキルを習得したいと思っています。もっとも企業は,汎用性のあるスキルを習得させると,辞められる可能性があるので,長期雇用を期待する幹部候補の従業員には,下働きから始めさせ,その企業組織の一員としてのしきたりなどを教え込んでいこうとします。ここに企業と若手従業員の期待のミスマッチがあり,結局,若者は辞めていくのでしょう。とはいえ,スキルのない若者は,いったい,どこでスキルの習得をすればよいのかが問題です。賃上げの恩恵に浴するのは,現時点では,大学や高専でスキルを習得できる理系人材か,すでにデジタル関係の仕事をしてきた中堅以上の労働者くらいでしょう。多くの労働者にとっては,自力でスキルを習得していくことが必要となります。しかも政府が目指す流動化政策が進むと,いっそう企業内の技能習得は機能しなくなります。教育投資をしても,回収できる可能性が低いからです。一方,教育しなくても高いスキルをもっている即戦力には,教育費用は不要なので,企業は高い賃金を提示できます。それに他企業との競争という要因から賃金がつり上がる可能性があります。
 教育によるスキルの底上げがうまくいかなければ,すでにスキルをもっている人とそうでない人の格差が大きくなっていくことが予想されます。社会の分断を生みだしかねない危険性があります。正社員と非正社員の格差という図式で物事をみている人も多いのですが,デジタル格差のほうが,はるかに深刻な問題なのです。教育(職業教育)について,政府がとりくむことの重要性はしつこく言い続けていますが,なかなか変わっていません。親は,自分の子どもの数十年後の社会は,いまと全く異なっていることを想定して,政府に頼らずに,子どもの教育に取り組む必要があります。今後は,民間の有志による「寺子屋」的な教育の場が,デジタル時代にふさわしい形で展開していくのではないかと予想し,また期待をしています。

 

 

 

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