王将戦始まる
藤井聡太王将(五冠)に,タイトル通算100期がかかる羽生善治九段が挑戦する王将戦が始まりました。後手の羽生九段が一手損角換わり戦法を採用しました。羽生九段は将棋は先に攻めたほうが損をすることが多いと,どこかで書いていました。後手の一手損角換わり戦法は手損となりますが,羽生九段はそれをあまり気にしていないのかもしれません。いずれにせよ,最近あまり指していなかった戦法だそうで,藤井五冠は驚いたことでしょう。1日目は互角でしたが,封じ手のときには,やや羽生九段が指し手に困る状況であったようです。封じ手は3七に歩を垂らすもので,と金をつかった着実な攻めを狙ったのでしょうが,藤井王将はこれを相手にせずに先手陣に駒を打ち込んで攻めていきました(3七歩は投了図 でもそのまま残っていて,結局,藤井王将はこの手を緩手にしたということです)。ただ,藤井王将が飛車を見捨てて,金と桂を得るという二枚替えをしたあたりは,AIの評価値では羽生九段がわずかに有利でしたが,その後は徐々に藤井王将が優勢を築きました。羽生九段は角を桂を交換する駒損をしながらも,必死に藤井王将の玉に迫りましたが,AIの評価値では形勢はかなり開いていました。最後は,藤井王将は,最速の攻めで羽生玉を寄せてしまいました。藤井王将の快勝といってよいでしょう。始まったばかりですが,羽生九段にとっては,厳しい戦いとなりそうです。
藤井五冠は,2月には10期連続で棋王のタイトルを守っている渡辺明名人に挑戦するタイトル戦も始まります。忙しいですが,若いので対局が多い方が調子を維持しやすいかもしれません。渡辺棋王とは対戦成績もよく,6冠のチャンスは十分にあります。A級順位戦も残り3局を残すところで,ついに単独トップに立ちました。こちらでも渡辺名人への挑戦が近づいており,7冠も視野に入ってきたといえます。