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2023年1月26日 (木)

外の力を借りる

 小学校のPTAのアウトソーシング事業に,近畿日本ツーリストが乗り出しているようです。子どものために親(多くは母親)が,PTAの仕事をするのは当然とされてきたのですが,共働きが一般化するなか,徐々にPAT業務が負担となり,引き受け手がなくなりつつあるということが背景にあるようです。どうしても必要な業務であれば,外注することもありだと思います。無理をしないことが,業務の質を上げ,かつ持続可能となります。
 社会保障の4経費と呼ばれる「医療,年金,介護,子育て」は,家庭からアウトソーシングすることが認められた分野といえます。病気になった人,高齢者,子どもの世話はプロに任せるということです(年金も,貯金を国の専門家に委ねて運用してもらうということです)。国の補助があるのは有り難いのですが,その費用はずしりと国民にのしかかっています。でも,やはりこれはアウトソーシングしてよかったと考えるべき分野なのでしょうね。
 大学の入試の試験監督も外注すべきことです。私はあと6年で定年になりますし,シルバー世代が試験監督を引き受けるのは構わないですが,若い人がこういう業務にエネルギーと時間をとられるのは可哀想です。外注しても問題はありません。大学入学共通テストも同じです。研究者である大学教員に,しっかりした試験監督をするよう求めるのは,無理なことです。時間があれば,頭のなかで論文の構想を練るのが研究者の性なので,それをおさえて監督に集中せよというのは,無茶な要求なのです(だから車の運転もしないほうがよいのです)。
 企業の外注は,労働法的には,いろいろ問題となりますが,経営戦略としては,なんでもかんでも社内に抱え込まずに,うまくアウトソーシングすることが大切です。もちろん,システム関係のように,今日の企業の戦略のコアとなる部分は,むしろこれまで外注しすぎていたので,内製化することも必要かもしれません。この点は,企業だけでなく,自治体もよく考えるべきです。しかし,企業内にはアウトソーシングしたほうが,より本業に集中できるものもあるのであり,そういうものはむしろ積極的に進めるべきなのです。もちろん,外部に業務を出すだけでは成功しません。外部にだしながらも,うまく内部の本業につなげるという視点が大切です。
 さて,大学の話に戻ると,清掃や守衛はすでにアウトシーングしているようですが,より企業戦略に近い部分についてのアウトソーシングを考えていくことが必要です。実際,実務家教員の活用は,それに近いところがあります。入試業務なども含め,「外の力を借りる」ことに,もっと取り組んでもらいたいものです。

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