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2023年1月10日 (火)

学校の重要性

 今日の学部の授業で,過疎地出身の学生が,過疎問題の解決にテレワークはどこまで有効かというテーマで報告をしてくれました。テレワークによって,勤務場所が多様化することは間違いないのですが,それによって地方の過疎問題の解決ができるわけではなく,報告者の主張は,むしろ小学校をきちんと整備することが地方に移住者を呼び込むために必要というものでした。これについては,他の学生から,過疎問題の解決において,学校の充実は優先度が高いものではなく,もっとやるべき政策が他にあるのではないかという(当然の)批判もありました。それに対しては,学校はいったん廃校にされたらもう復活できないので,なんとか廃校されないようにすることが優先度の高い課題であるという反論がなされました。
 私が驚いたのは,学生が出してくれた文科省の「公立学校の年度別廃校発生数」のデータです。これほど廃校があるとは知りませんでした。背景には,少子化や市町村合併があるようですが,公立学校がこれだけ減少しているのは,ちょっとショックです。
 17日の日経新聞の夕刊の「廃校が変身,集客の一翼」という記事では,「廃校が集客施設や工場に生まれ変わっている」ということが紹介されていました。廃校はやむなしだが,それをうまく利用して地域活性化をすればよいということなのでしょうが,それよりも学校が減ること自体のデメリットをもっと真剣に考えるべきだというのが,報告した学生の問題意識だと思います。集客施設や工場ができると,人は集まるので,そうなると生徒も増え,学校も減らなくなるのではないか,とも言えそうですが,そのシナリオがどこまで当てにできるかは不明ですし,それによって元の町や村が,変貌してしまう可能性があることをどう考えるべきかという問題もあるようです。
 他方で,日本経済新聞の15日の朝刊の「大機小機」では,吉田茂の「日本を決定した百年」という論考をとりあげて,「『現在でも田舎を旅行すると,小学校の校舎が村で一番よい建物であることが多い』『政府に参加しなかった知識人の多くは私立学校をつくって教育にあたった』とある。教育を重んじたことが日本の近代化の大きな特徴であったことを指摘している」と書かれています。
 こうみると,国力を支えるのは教育であり,学校の存在はまさに教育の重要性を象徴するものなのです。それが次々と廃止されていくことに危機感をおぼえた学生の主張は,傾聴に値するものといえるでしょう。

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