映画「罪の声」
Amazon Primeで「罪の声」という映画を観ました。小栗旬と星野源が主演で,監督は土井裕泰です。塩田武士の原作は読んでいませんでしたが,原作も面白そうです。あのグリコ・森永事件を基にした作品です。実際の事件でも,子どもの声が犯人からの指示として使われていたのですが,その文章を読まされた子どものその後の運命がどうなったのかが,本作の主題となっています。私は,あまり根拠なく,機械で合成された声が使われていたのかなと思っていたのですが,実際の子どもの声が使われていたとすると,その子たちがその事実を知れば,たいへんなショックを受けるでしょう。
映画では,父親が開業したオーダーメードの洋服屋を継いでいる曽根俊也(星野源)が,家に残されていたカセットテープの自分の声を聴いたところから話が始まります。彼は自分の幼いときの声が,あの犯罪(映画では,「ギンマン事件」となっています)で使われていたことを知り,ショックを受けます。同じように声を使われた他の2人の子どものことが気になります。一方,新聞記者の阿久津(小栗旬)も,上司の命令で,すでに時効になっているこの未解決事件を追っていて,曽根のところにいきつきます。二人は協力して,残りの2名を探し,さらに曽根家で見つかった,父親の兄の達雄(宇崎竜童)の手帳のことを阿久津に話します。手帳では英語で,事件に関係しそうなことが書かれていました。阿久津は,達雄がイギリスに住んでいたことをつきとめ,事件の真相を聞き出します。実は俊也の母も,事件に関係していました。
曽根俊也は,妻と娘と幸せな人生を送っていますが,残りの2人(姉弟)は,壮絶な人生を歩んでいたことがわかります。大人たちの身勝手な理由から,巻き込まれてしまった子どもたち。その理不尽さに怒りを覚えますが,日本にはある時期,反権力や反資本主義といった大義のためなら,暴力も家族の犠牲も,そして反社会的集団と手を組むことも許されるという考え方があったのでしょう。一方,達雄が手を組んだ相手はお金が目的でした。企業脅迫をすることによって株が下がることを見込んで空売りで大もうけし,そのお金が政治家に流れたという事件の真相に迫る部分もありますが,映画では深追いをしていません。
35年前に起きたあの事件は,いったい何だったのか。この映画は,一つの推理を示していますが,現実において確かなことは,グリコ・森永事件は未解決であり,犯人も,犯行動機もわからず,そして,あの声の子どもたちのその後もわかっていないということです。いつか真相が明らかになるときが来るのでしょうか。
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