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2022年11月 7日 (月)

セブン­イレブン・ジャパン事件・東京地裁判決

 中労委で棄却命令(2019年3月15日)が出たセブン­イレブン・ジャパン事件の取消訴訟の第1審判決が,さる66日に東京地裁で出されました。加盟店オーナーの労働者性を否定して,請求棄却の結論です。
 長文の判決ですが,基本的には,判例や労使関係法研究会報告書の整理した6つの判断要素に照らして判断しており,この点は初審命令の岡山県労委や中労委とほぼ同じです。
 私は「フランチャイズ経営と労働法ー交渉力格差問題にどう取り組むべきか」という論考(ジュリスト154043-49頁)のなかで,中労委命令を論評しながら,本事件では,救済の必要性が高いものの,現在の法制度上,不当労働行為の救済手続に載せることは難しいという考え方を提示しています。問題の本質は労働者性の有無という入り口にとどまるのではなく,このような事件に対してどのように対処したらよいのかという,ある種の立法論にあります。
 中労委は,「加盟者と会社の関係をみると,加盟者と会社の間には交渉力の格差があることは否定できない」と述べていました。そのうえで顕著な事業者性があることなどから,労組法上の労働者には該当せず,不当労働行為の救済は認められないとしたのです。ところが,東京地裁判決は,当事者間の「交渉力の格差」には視点をあてず,たんに労組法上の労働者性をめぐる6要素に則して労働者性を否定しており,コンビニのビジネスモデルの内容に十分にふみこんだ判断をしているように思えません。そもそも最高裁の示した6要素は,新国立劇場運営財団事件,INAXメンテナンス事件,ビクターサービスエンジニアリング事件のように,特殊技能をもったり,業務委託で仕事を請け負ったりしている個人事業者の事案で定立されたもので,あくまで事例判断にすぎず,本件のように,ある確立したフランチャイズのビジネスモデルに参画した個人事業者の事案に当然に適用すべきものとはいえません。最高裁が事例判断にとどめたものを,労働組合法3条の解釈基準のようにして適用していくのは,解釈手法としてもおかしいでしょう。法律家のなかには,この6つの要素を事案に適合させながらブラッシュアップしていくことこそが大切である,と思い込んで突き進んでいく人もいますが,それでは批判的視点に欠けることになります。なぜ6要素が出てくるかをしっかり理解しておかなければ,今回の東京地裁判決のように,物足りないものが出てきてしまうのです。結論はどうあれ,もう少し説得力のある判決を望みたいところです。東京高裁できちんと判断してもらい,最終的には最高裁で決着をつけてもらったほうがよいと思います。最高裁には事例判断ではなくて,本格的な解釈論を展開してもらいたいですね。そして,その前にも,学説のほうも最高裁に参考となるような理論的検討を進めておく必要があるでしょう。
 もちろん,この問題は,労働組合法や不当労働行為制度だけをみるのではなく,独禁法や中小企業等協同組合法などもふまえたうえで,個人事業者や零細事業者へのサポートのあり方,その団結についてどのような助成措置をとるべきかという大きな視点で議論をしなければならないテーマであることも忘れてはなりません。

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