フリーランス新法をめぐる気になる動き
Yahoo ニュースで,「命令違反に罰金50万円以下 フリーランス保護新法で検討 政府」という記事が出ていました。新法に向けた動きがありますが,もし罰金にまで踏み込むとすれば,これはかなり問題があります。これについては,いずれきちんと論じますが,すでに私がこれまで日本経済新聞の経済教室で発表した論考や先般の政府の税制調査会で話したこととの関係で,簡単なコメントをしておきたいと思います。
フリーランス政策の最も難しい点は,対象となるフリーランスをどうとらえるのかです。拙著『AI時代の働き方と法』(弘文堂)204頁では,自営的就労者を,偽装自営的就労者,準従属労働者,真正自営的就労者の三つを分けて考えるべきとし,そのうち真正自営的就労者には,自営をサポートする法制度が必要と書いていました。また先般の政府の税制調査会のプレゼンでは,特殊スキル型,ハイ・ミドルスキル型,ロースキル型に分けるべきとも述べました。後者は,ギグワーカーを意識して,ロースキル型は区別して考えるべきということを明確にするための分類です。いずれにせよ,異なるタイプのフリーランスや自営的就労者(フリーワーカー)をゴチャゴチャにして論じてもうまくいかないのです。
今回の新法の構想は,フリーランスのどこに焦点をあてるのかが明確ではありません。このため,法の趣旨も射程も明確ではない状況にあります。偽装自営的就労者の問題は,労働法の問題そのものですので新法は不要です。準従属労働者にターゲットをあてるのなら,新法が必要かもしれませんが,真正自営的就労者と明確に区別をした規制をする必要があります。この点については,弁護士ドットコムでの平田麻莉さんのインタビューが,ポイントをついた素晴らしい内容ですので,ぜひ政府の関係者や国会議員も読むべきです(フリーランスの法的保護「かわいそうな人扱いされると議論が歪む」フリーランス協会・平田代表が語る課題)。
もしかりに真正自営的就労者を対象とした場合,どのような「規制手法」が望ましいのかも重要です。保護ではなく,サポートという視点が重要です。しかし,この点について,役人に良いアイデアがないので,うまく規制の枠組みが作れないのだと思います。私たち研究者がもっとアイデアを出す必要があります。経済教室でも書いたように,新しい酒には新しい革袋を,です。その革袋は,労働法の単純な延長や,独禁法・下請法の単純な延長上にあるものではないと思います。この点については,現在,共同研究をしているので,そのうちに成果を発表できると思います。
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