黙食について
小学校の「黙食」(昔からあった言葉でしょうか)の要請がなくなるようです。文部科学省の通知で,「飲食はなるべく少人数で黙食を基本」とされていたのが,削除されて,「座席配置の工夫や適切な換気の確保などの措置を講じた上で,給食の時間において,児童生徒などの間で会話を行うことも可能」ということに変わったそうです。文科省は,もともと黙食を義務づけてはいないという趣旨のことを言っているようですが,なるべく黙食を基本とする,と言われたら,現場は,おしゃべり禁止令と捉えるでしょう。
ただ,古い世代からすると,食事中はしゃべってよいというように,政府から言われると,ちょっと違和感もあります。もちろん,私もいまは,食事中おしゃべりします(たくさんします)が,子どものときは,食事中はしゃべるなと言われていました。食べるというのは,非常に大切なことであることに加え,口のなかのものが飛ぶかもしれないというマナーや衛生上の観点もあったのかもしれません(それと,寿司屋の大将が,新鮮なネタの寿司を出しても,隣の人とおしゃべりばかりして,食べてもらえずに残っているのは,あまり良い気分がしないと言っていたことを思い出しましたが,作った人の気持ちも考えるべきですね)。いずれにせよ,私の感覚では,食事中のおしゃべりは,基本的には行儀が悪いのであり,もちろん大人になると,その感覚はなくなっていきましたが,今回は小学生相手の通知ということで,ちょっと違和感をおぼえたのです。
昔の日本では,特別な日を除き,食事は決して楽しい場ではなかったと思います。食事を家族団らんでとるというのは,それほど古いことではないはずです。西洋風の外食が一般的になり,それが家庭内の食事のとり方にも影響したのでしょう。小学校での給食の黙食は可哀想という意見が出てきたのも,こういう食事風景の変化と関係しているのだと思います。それに,しゃべりながらも行儀良く食べることができれば,それそれこそ,(グローバルスタンダードの観点からも)よい躾けになるでしょう。
ただ,そう思う反面,たしかに黙食はいきすぎでしょうが,小学生は,給食の時間は,あまりおしゃべりはせず,出されたものをしっかり噛んで味わって食べて,昼休み時間を十分にとって食べたものを消化してから,午後の勉強に臨んでもらえればな,と思ったりもしてしまいます。