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2022年10月 2日 (日)

東野圭吾『沈黙のパレード』(文春文庫)

 映画化で話題になっている作品です。最後のどんでん返しが秀逸でした。以下,ネタばれあり。
 あるゴミ屋敷で火事が起こり,そこから二つの白骨死体が出てきました。一つは,その家に住んでいた老女で,もう一つは身元不明の女性です。どちらも火災が原因で死亡したわけではありませんでした。身元不明の女性は,その3年前に行方不明になっていた並木佐織で,菊野市の商店街にある料理屋「なみきや」の長女でした。佐織は歌手志望で,新倉という音楽家の下でレッスンを受けており,新倉は彼女の才能に大きな期待をかけていましたが,突然行方不明になっていました。老女のほうは,死後6年くらい経過しており,その息子の蓮沼は,23年前にある少女殺害事件の容疑者でした。その事件で,蓮沼は完全黙秘をつらぬき,結局,自白がとれなかったため無罪となりました。佐織の件でも,蓮沼につながるものがありました。彼女は店でトラブルを起こしていたことなど,さまざまな状況証拠から蓮沼が犯人である可能性は濃厚でした。23年前の事件で苦汁を飲まされた,当時駆け出しだったの刑事の草薙が,今度は係長としてこの事件を担当することになりました。しかし,今回も送検はしたものの,検察は起訴してくれませんでした。蓮沼の自白はなく,物的証拠も足りないというのです。保釈された蓮沼は菊野市にやってきて,かつての会社の同僚の増村の部屋に転がり込んでいましたが,あるとき蓮沼が増村の部屋で窒息死した状態で発見されます。殺害された可能性は濃厚ですが,蓮沼に恨みをもつ者は,佐織の父,その級友の戸島,佐織の婚約者であった高垣,佐織を指導していた新倉らたくさんいました。そしてどの人にもアリバイがあり,しかも誰も,この事件について何も語りませんでした。
 そこで登場してくるのが草薙から相談を受けた湯川教授です。彼は,蓮沼殺害のトリック(仮装パレードで使う宝箱をつかって液体窒素を運び,それをつかって睡眠薬で眠っている蓮沼を窒息させる)を見破ったのですが,さらにこの事件が23年前の事件と関係していることを指摘し,そのおかげで,草薙らは蓮沼と増村の過去を結びつけることに成功しました。そして徐々に,この犯行が,多くの人の蓮沼への恨みをつむぎながらなされたことがわかっていきます。ただ,蓮沼を実際に殺害したのは,思わぬ人が,思わぬ理由によるものでした。
 沈黙を通して無罪や不起訴を勝ち取ってきた蓮沼に対して,佐織を思う商店街の人たちが沈黙戦術で復讐しようとしたのですが,湯川はそれを許しませんでした。久しぶりに東野ミステリーを堪能しました。

 

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