現世代バイアス
10月18日の日本経済新聞の「大機小機」で,「現世代バイアス」ということが書かれていました。現在の政策の影響は,将来世代にも及ぶにもかかわらず,その意思決定は現世代だけで行われるから,どうしても現世代に有利で将来世代につけを残すような政策が採用されがちになるということを,このように呼んでいます。
その対策としては,赤ちゃんにも投票権を与えて,親が代理人として投票するという方法が提案されています。もう一つは,政治家が現世代の要求に安易に応じてしまうことを防ぐために,専門家からなる独立機関を作って意思決定をさせるという方法も提案されています。もう一つ紹介されているのが,「フューチャー・デザイン」という手法です。これは,意思決定の際に仮想将来人をグループに入れて,例えば20年後の人になったつもりでプロジェクトを考え,意見を出してもらう,ということです。 日本でも実践例があるようです。
こうした将来構想をとりいれる自治体が増えていくのは望ましいことです。人口減少が進む地方ほど,本気でこういうことを考えていく必要を自覚しているのでしょうが,ほんとうは都市部も同じことのはずです。
環境問題は,まさに「現世代バイアス」に関わります。原発問題もそうでしょう。将来世代にツケを残さず,現世代の利益もある程度守られるような社会設計は容易ではないでしょうが,テクノロジーもうまく活用して実現していかなければなりません。
国民みんなが次世代のことを少しでも考えるだけで,ずいぶんと社会が変わるような気がします。何が何でも選挙に通りたいと考える政治家こそが,「現世代バイアス」を増幅させる元凶となっています。政治から距離を置いた独立した意思決定機関に委ねるのは,民主主義の否定をみるべきではなく,民主主義の補完形態としてうまく活用すべきものでしょう。本来は,参議院にこそ,そういう機能をはたしてもらいたいのですが……。
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