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2022年9月 8日 (木)

幼い子どもを守れ

 牧之原の認定こども園の子ども置き去り死亡事故は,あまりにも可哀想で言葉を失います。酷暑のなか,水を飲み尽くし,必死に助けを求めていたであろう3歳児のことを思うと,関係者の人命軽視への怒りが収まりません。最初にうっかり置き去りにしてしまっても,その後も,子どもを救う機会は十分にあったはずであり,関係者の誰か一人でも気がついてくれていたら助かっていたのです。大事に育てていたはずのご両親や親族の悲しみを思うと胸が引き裂かれる思いです。
 これはバスでの送迎のチェックの徹底とか,そういうことをすれば十分という話ではないように思います。普通の保育所は,そんなことは言うまでもなくやっているのです。こういう事故を起こすところは,幼い子を預かるということの重みをわかっていない人が経営に携わっていると疑いたくなります。いくらチェック体制を強化しても,人の問題であれば限界があるような気もします。
 ところで,児童福祉法45条に基づき設けられている「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の33条2項によると,職員配置基準は,(「おおむね」ということですが)0歳児の場合,3人に保育士1人, 1・2歳児の場合,6人に保育士1人,3歳児の場合は,20人に保育士1人,4歳児以上の場合は,30人に保育士1人となっています。3歳児20人を保育士1人がみるのは,かなり無理があるでしょう。2歳児6人を1人でみるのも,いくらプロの保育士でも限界ぎりぎりでしょう。日本は世界的にも基準が緩い国のようです。とくに3歳児以降は,危険水準です。たしかに,基準を強化すると,人件費負担で運営できない保育所も出てくるかもしれません。しかし,これは生命や安全の問題であると考えると,コストがかかるなら,税金を投入すべきなのです。国葬など無駄なことにカネをかけるくらいなら,もっと意味のあることに税金を使ってほしいです。
 人手不足も深刻なのでしょうが,有資格の潜在保育士がいるのであり,処遇改善すれば労働市場に戻ってくる可能性は十分にあります。
 岸田政権は,「人への投資」と言っていますが,幼い子が命を危険にさらしながら育っていること自体,「人への投資」の前提の問題として,対策に手をつけるべきでしょう。また預ける親が,安心して仕事ができないということも,「人への投資」の前提の問題と考えるべきでしょう。
 さらに言うと,ここでもデジタル技術が使われるべきなのです。韓国では,送迎バスの置き去りがないようにIT技術を使っている(運転手らが最後方のボタンを押さなければアラームが鳴るなど)と報道されていました。人為的なミスをできるだけ避けるための工夫が必要です。できれば,保育所内にカメラを設置して,保護者はいつでも子どもの状況をPCやスマホでチェックできるようにするということも検討してもらいたいです。今回ももしそういうシステムがあれば,親が子どもがいないことに気づいて,すぐに保育園に連絡できたかもしれません。企業は,職場で親がリモートで子どもをチェックしていることを,職務専念義務違反と言わないようにしてもらいたいです。
 もちろん,普通は,親は保育所を全面的に信用していますし,多くの保育所は信用に値するところです。それでも,こういうことがあると,全面的に信用してしまってはいけないのだと思います。誰でもミスはあります。それに幼い子どもたちは,何かあっても親には伝えることができません。保育現場をガラス張りにしてもらえれば,ずいぶんと安心感が高まります(実際,職場のすぐ横に保育所を設置して,文字どおりガラス張りにして,働く親が常に子どもの状況をチェックできるようにするサービスを展開している企業の話を聞いたことがあります)。そういうところにこそ,税金を投入してもらいたいのです。

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