テレワークは定着するか
予告していましたように,昨日は,佐藤博樹さんとのランチタイムセミナーがありました。時間が限られていて,どうなるかと思いましたし,打ち合わせはごく簡単なもので,ほぼぶっつけ本番でしたが,なんとか終えることができました。視聴者も多く,私にとっては貴重な経験でした。やはりWebセミナーはすごいです。どこかに人が集まっているところで講演するのとは違い,こちらが移動しなくても,たくさんの人に話を聞いてもらえるのは,何度やってみても,不思議な感覚です。聴衆の顔が見えるわけではなく,佐藤さんの顔だけを見て話すので,二人だけだと思ってつい余計なことを話してしまうことがないように,気を付けていました。
実は講演後に佐藤さんやスタッフの方と雑談をしたのですが,そこでは少し過激な話もしていました。経営者や上司がテレワーク導入に賛成してくれなくて困っているという意見について,話が盛り上がりました。これは実は,私がテレワーク関係の講演をしたときに,よく質問されるテーマです。上司層からはテレワークについての批判的な質問をよく受けるのと同時に,若手からは上司たちの無理解についての質問や嘆きが投げかけられるのです。拙著『誰のためのテレワーク?』(明石書店)でも,プロローグで,先輩たちの無理解に嘆く主人公Aくんの話を取り上げています。それへの解答は,まずはテレワークの価値を理解してもらうために拙著を読んでもらう,と言いたいところです。拙著のメッセージは,テレワークは,導入するかどうかの問題ではなく,どのように導入するかが問題だというものであり,それを受け止めてもらえればと思うのです。ところで,テレワークが実現する場所主権は,在宅勤務オンリーではなく,個人が場所を選んで生活や労働ができるというところがポイントであり,結果として就労場所はオフィスであってもいいし,はたまたリゾート地であってもよいのです。大事なのは,労働者が選択できるということです。佐藤さんも昨日,このことを繰り返し指摘してくださいました。こういう働き方を許容するのは,マネージする側には大変な負担となるのですが,それを乗り越えることこそが,プロのマネージャーの仕事なのです。一方,労働者側からすると,そういうマネージメントができない会社には,とっとと見切りをつけてしまうのも大切です。これは多くの聴衆の前では言えないことですが,個人的に相談されたら,そう答えます。テレワーク体制やデジタル体制を導入するのには手間も費用もかかるでしょうが,その方向に行っていない会社の将来は暗いでしょう。いまはピンピンしているような会社でも10年後はどうなっているかわかりません。これからは次々とデジタルネイティブ世代が出てくるので,テレワークなんて当たり前という感じになるでしょう。場所主権を享受できないような会社には,優秀な人材は集まらないでしょう。役所も同様です。いまだにファックスやフロッピーを使っている会社に誰が入所・入社するでしょうか。そう考えると,いますでに働いている人も,自分たちの会社がどこまで新しい流れに適応する能力をもっているかを,しっかり見極める必要があります。
私がテレワークのことを書き始めてからかなり時間が経ちますし,それを上記の本にまとめた2021年はすでに遅すぎると思っていましたが,いまなおアクチュアルなテーマであり,拙著のメッセージを伝えなければならないという状況で,日本はこれでほんとうに大丈夫かと不安になります。
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