兵庫県の地域別最低賃金は960円
兵庫県の2022年度の最低賃金は960円となりました(兵庫地方最低賃金審議会が労働局長に答申して,これで事実上確定です)。中央最低賃金審議会の目安の31円より1円アップです。神戸新聞NEXTの記事 「兵庫県の最低賃金960円に 32円引き上げ、物価高騰で過去最大の上昇幅」によると,使用者委員は14円,労働者委員は35円を主張し,「最終的に中立的な立場にある学識者らの委員が,物価高による個人消費のひっ迫が想定されると指摘し,32円増で決着した」そうです。学識者らの委員とは公益委員のことでしょう。兵庫の公益委員には労働法関係者はおらず,最低賃金は法的な問題ではないということでしょうね。
時間あたり32円アップということで,これで過去2年間で60円の大幅アップです。物価が現時点ではまだ海外ほどは上がっていないなかで(体感ではかなり上がっているのですが),思い切った引上げですが,中小企業にはかなりきついものかもしれません。また兵庫県は,阪神地区は大阪と労働市場が一体化していますが,それ以外の地域は違うので,引上げの影響は重くのしかかるかもしれません。
原材料の高騰もあるなかで,最低賃金の引上げとなると,私が経営者ならデジタル化による省人化をいっそう進めようと考えたくなるかもしれません。日本人の約7割は中小企業で働いているのであり,そこの経営が危なくなると失業問題が発生するでしょう。大事なことは中小企業と大企業との間の取引が適正に行われるようにすること(独占禁止法や下請法の問題です)であり,また中小企業のデジタル化への政策的なてこ入れでしょう。後者は,雇用政策的には逆効果(雇用減)となる可能性がありますが,時代の流れでもあり,やむを得ないでしょう。最低賃金をこれだけ急速に上げるとなると,(少し前に適用除外に消極的な意見を書いていたのですが)スタートアップには最低賃金の減額特例のようなものを考えてもよいかもしれません(現行法上は,最低賃金法7条で,一定のカテゴリーの労働者に対して,都道府県労働局長の許可を得られれば,減額の特例が認められています)。
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