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2022年8月18日 (木)

DAOの可能性

 これからの企業経営は「プロジェクト型」になり,会社員ではなく,プロ人材がそこに集まって,自己の得意分野で貢献するような働き方になるということは『会社員が消える』(文春新書)48頁で書いていますし,そこでも参照した「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」でも言及されています。このときには,バーチャル空間に結集して働くプロジェクト型も頭のなかでは想定していましたが,WEB3.0は,さらに先に進んだものとなるかもしれません。
 メタバース,ブロックチェーン,NFTといったWEB3.0のキーワードを耳にすることが増えていますが,これに加えて注目されるのが,DAOです。Decentralized Autonomous Organizationの略称で,「分散型自律組織」という訳語があてられるのが一般的です。
 DAOは,その掲げるプロジェクトに賛同する者が,そのDAOの発行するトークンを所有して,プロジェクトに参加し,その事業遂行はトークンを所有する者の決議により決めていくというものです。そこでは経営者も従業員もない民主的な組織であるということが謳い文句です。各人はコントリビューションに応じてトークンを与えられます。
 ネット上のプロジェクト労働なのでしょうが,その実態はよくわからないところが多いですし,法的な位置づけも不明です。いずれにせよ,会社で雇用されて労働法の適用を受けて働くというのとは,まったく異なるものです。個人が自律的に自らのスキルや能力をいかして社会課題の解決のための諸プロジェクトに参加し貢献するというものであれば,悪いものではありません。これはWEB3.0でなければ実現できないものではないのでしょうが,ブロックチェーンを用いた技術(スマートコントラクト)で,誰でも場所や国籍や性別に関係なく参加でき,様々な活動がすべて透明化されている点が興味深いです。プラットフォームに支配されずに,各人がトークンによって,自分の価値を所有し,処分できるという構造も魅力的です。
 WEB3.0の時代には,多くの人がDAOで働くようになるかもしれません(もちろんネット上でやるのに適しない仕事は別です)。そこに至るまでに,いろいろ工夫すべき課題はありそうです。「民主的な」ガバナンス体制で,ほんとうに仕事がうまくいくのかは,やや疑問もあります。ただクラウドファンディングでもそうですが,誰かがリーダーシップをとって,この指止まれという形でプロジェクトを立ち上げると,それに賛同する人からお金が集まるというのと似たようなものだと考えると,それをネットでやっているようなものと言えそうです。
 もう少し勉強して,DAOの可能性について探ってみたいと思います。

 

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