五百旗頭先生のご高説拝聴
昨日のテレ東の日曜サロンには,五百旗頭先生が出ておられました。テレ東BIZで,後からみました。いつものことですが,先生の話は為になります。
負け戦はしてはならず,軍事力では勝てない中国と戦争してはならないのですが,もし中国が攻めてきたときにはスッポンのように噛みつけるようにしておく必要はあるとし,その一方で,中国はリアリストなので,経済面でしっかり交流をしておくこともが重要だとおっしゃっています。「日米同盟,日中協商」が,先生の持論です。軍事力に頼るという点については,必ずしも賛成ではないのですが,しっかり防衛戦略を立てることが必要というのはそのとおりでしょう。防衛大臣はそのことに専念したうえで,首相や外務大臣は,それとは切り離して外交により高い視点から日中関係をしっかり築けるようにする必要があるというのは説得力があります。リアルな国際政治のなかで,どうやって生き延びていくかについて,五百旗頭先生には,ぜひ政権にアドバイスをする存在でいてもらいたいですね(すでに,そうなのかもしれませんが)。
一方,先生の安倍元首相評も面白かったです。まず,外交・安全保障面での貢献はきわめて大きかったという評価です。米欧関係をズタズタにしたTrump氏をなだめながら(ときにはゴルフでわざと負けながら?),アメリカが離脱したTPPをTPP11としてまとめたり,RCEPなどを実現したり,「自由で開かれたインド太平洋」という概念で,アメリカも巻き込んでこの地域の安全保障の枠組みをつくった手腕などを高く評価されていました。一方で,安倍元首相は「貴族」であり,庶民の気持ちがわからないところがあり,森友・加計問題は,その何が悪いかはわからないままだったのではないかと指摘されていました。たしかに赤木さんの問題などに,もう少し丁寧に対応していれば,ずいぶん印象も変わっていたかもしれません。
外交・安全保障面は,なるほどそのように評価するものなのかと思いましたが,個人的にはロシアとの関係は改善せず,北朝鮮の拉致問題も前進せず,アメリカに寄りすぎて,中国とはうまくいかず,いまから思えばあれほど旧統一教会と仲が良かったのに,韓国ともうまくいかなかった(むこうの政権のほうにも問題があるのですが)のであり,こういう点をみていると,あまり高く評価できないのではないかという気もします。もちろん100点満点の外交や安全保障というのは無理なのですが。いずれにせよ,安倍外交の残したものが今後どのように影響してくるのか,また岸田首相が,これからどう取り組んでいくのかが注目です。
« ワクチン接種と政府の信用 | トップページ | 契約と信頼とブロックチェーン »
「国際政治」カテゴリの記事
- 悪夢?(2024.11.06)
- Minnesota(2024.08.08)
- 二大政党制は限界あり?(2024.07.27)
- Harrisでいくのか(2024.07.25)
- 政治家の信念(2024.07.21)