« すかいらーくの新勤務時間管理方式について | トップページ | 社会的責任と法的責任 »

2022年6月13日 (月)

電子投票の導入を早急に実現せよ

 今朝のNHKの「おはようニュース」で次の参議院選挙をひかえて,障害者の投票のかかえる問題について採り上げられていました。重要なテーマです。郵便投票の要件は厳しいようで(総務省の関連サイト),例えば私の父のように歩行が大変というだけでは,郵便投票はできないようです。父もおそらくもう何年も投票をしていないのではないでしょうか(公職選挙法施行令55条によると,居住施設によっては,不在者投票ができるところもあるようですが)。何となく見逃してきましたが,これは重大な権利侵害といえなくもありませんね。
 こうなると,いつもの話ですが,電子投票の導入です。これはどうなっているのかとググったら,総務省のHPサイトが最初にヒットしました。議論はあったようですが中断しているようです。デジタル庁がせっかくできたのですから,国民の基本的な権利にかかわる投票についてこそ,優先的にデジタル化に取り組んでほしいですね。トラブルが起きてはいけないということで,及び腰になるのもわからないではないのですが,公職選挙のようなところできちんとできるシステムを作れば,いろんなところに応用できて,行政のデジタル化も進むのではないかと思うので,そういうことをやろうというチャレンジ精神をもってもらいたいです(現行のもので何とかできるうちは,それでいこうという発想はダメなのです)。
 今朝のニュースでは,先進的な(?)自治体が,障害者への対応のマニュアルを作って対応しているということが紹介されていて,ちょっとずっこけました。もちろんないよりはるかにマシですが,マニュアルを作るという発想が,アナログ的すぎます。そもそも,マニュアルを作って事前に読むなんてことは不可能です(いつ障害者が来られるか,わかりませんし)し,障害者が来てから,マニュアルで確認しても時間がかかりすぎて,事務が渋滞してしまうでしょう。役所の発想は,危機をできるだけ事前に把握して,それへの対応を考えて,それを文章化して,現場の「兵隊」に読ませればよいと思っているのかもしれませんが,現場の「兵隊」の立場からすると,負担が重すぎますし,そもそも面前にリスクがあるという状況がないなかで,それを頭で想定してマニュアルを読んでも頭に入りません(これは,私のセンター試験の監督経験から言っていることです)。一つの対策として,動画でみせてくれるとわかりやすいというのはあります。最近では,いろんな商品の取り扱い説明書は,それだけ読んでも意味がわからないことが多くても,YouTubeで動画で確認して対応できることが多いです(一般消費者が勝手に投稿してくれているものも参考になることが多いです)。しかし,そんなことより抜本的な解決は,デジタル技術の活用です。
 選挙の障害者対応も,電子投票の導入でかなりの部分が解決するでしょう。障害者が働きやすいようにするデジタル技術を開発するというのは,今後の雇用社会における重要な課題ですが,これは電子投票にもつながる話です。これからの政策は,デジタル技術を活用することを前提に,そこで生じる問題を「走りながら」解決していくというくらいの姿勢で臨んでもらいたいです。これが私の期待している「デジタルファースト政策」です。
 最高裁判所裁判官国民審査についても,最高裁大法廷は,先日の525日の判決で,在外国民の審査を認める規定を欠いていることを違憲と判断して,立法府の不作為を断罪しました。最高裁は,「在外審査制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの,その課題は運用上の技術的な困難にとどまり,これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難い」と述べて,「在外審査制度を創設する立法措置をとることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠ったものといえる」とし,こうした立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受けるとも述べています。最高裁のいう「運用上の技術的な困難」は,デジタル技術の導入にもあてはまるものかもしれませんが,こういうものを乗り越えるべきだというメッセージが最高裁判決に込められていると思います。インターネットで投票できれば,国境を超えても問題はありません。
 海外在住者だけでなく,障害者などの移動困難者の選挙や最高裁判事の国民審査の投票について,抜本的な対応策を導入しなければ,憲法違反となりかねないのではないでしょうか(憲法学者はどのような議論をしているでしょうかね)。
 もちろんセキュリティ,本人確認など,簡単にやれることではないかもしれませんが,やれないことでもなく,しかも,やれば多くの人の公的な権利が守られるということであれば,政治家はもっと真剣に取り組むべきでしょう。現政権は,あまりそういうものに関心がないような気がしますが,「1票の格差」問題も含め,真剣に取り組んでもらわなければ,自分たちの議員としての地位の民主的正統性が揺らぐことになることを理解してもらえればと思います。

« すかいらーくの新勤務時間管理方式について | トップページ | 社会的責任と法的責任 »

社会問題」カテゴリの記事