ムーブレス・スタディ
「中央教育審議会大学分科会は22日,大学のオンライン授業の単位上限を緩和する文部科学省令改正の骨子案を大筋で了承した」ということのようです(日本経済新聞6月22日電子版)。現在の60単位の上限を緩和するということには賛成です。
昨日のムーブレス・ワークの話の延長で,大学教員もどこからでも授業をリアルタイムないしオンデマンドで提供できるようにしてもらい,学生も大学で受講してもよいし,自宅など好きなところで受講してよいということにすればよいのです。学生にとっては「ムーブレス・スタディ」です。
これからの大学は,学部だけでなく大学院も重要なのであり,18歳以上の人なら誰でも教育資源にアクセスできるようにすることが要請されるでしょう。既存の大学のイメージを壊す必要があります。大学の成績評価では,平常点というようなものもありますが,本来は,出席しようがしまいが,きちんと一定のレベルに到達するかどうかで単位認定をするということでよいと思います。重要なのは,どの先生のどの科目で単位をとったかです。成績が甘い先生の単位は価値がないということが社会の評判として広がると,先生も厳格な評価をするでしょうし,それに応じて学生も勉強するようになるでしょう。オンライン授業の時代は,そういうようになっていかなければなりません。
一般に,他大学から編入してくる学生について,他大学で修得した単位を,既修得単位と認めるかどうかは,授業内容と教員の名前をみて評価されていると思います。今後ジョブ型が広がり,企業の人事担当者が,当該ジョブについて学生がどのような能力をもっているかをほんとうにみたければ,習得した単位について,シラバス(通常公開されている)をみて,どの教員のどういう授業をとって,どのような成績がついているかまでリサーチしたほうがよいのです。そのためには,教員のことについても,ある程度,情報を得なければなりません。人事担当者も勉強する必要があるということです。従来は,大学での学習は重視されていなかったので,そんな細かいところまでみる必要はなかったのでしょうが。
将来的には,例えば,教師はオンラインセミナーを開講し,受講生の到達度をテストして,TOEFLのように点数をつけて,その証明書が就職に活用される(流動型社会が想定されています)といったことが出てくるかもしれません。どこの大学を卒業したかよりも,どの先生のどのような授業を聞いてdiplomaをもっているかが重視されるようになるかもしれません。経済学なら○先生,人事管理論なら○先生というように,とくに文系であれば,著名な先生が私塾的なセミナーを開講し,その合格者のdiplomaを発行し,その分野の「品質保証」をするというようなことになるかもしれません。大学卒業資格というのは,あまり意味のない時代がくるでしょう。小さな子どもを抱えている親御さんは気をつけたほうがよいです。