日経新聞にインタビューで登場
今朝の日本経済新聞の電子版の「オピニオン」欄で,編集委員の水野裕司さんの「解雇の金銭解決,日本も動き 柔軟な設計で新陳代謝促せ」というタイトルの記事が掲載されています。そのなかで私たちの『解雇規制を問い直すー金銭解決の制度設計』(2018年,有斐閣)もとりあげていただき,編著者である東大の川口大司さんと私の発言が紹介されています。政府の金銭解決とは違った方向で,抜本的な解雇規制を提言した私たちの問題提起に関心をもっていただけたのは,たいへん有り難いことです。この本は,いろんな意味で実験的な本であり,内容も少し難しいところがあるかもしれませんが,きちんと説明をする機会さえ与えてもらえれば,一般の人にも理解できるものだと思っています。水野さんも,しっかり質問してくださり,うまく読者に伝えるよう努力してくださったと思います。一研究者としては,私たちの提案が労政審などで採り上げられるかどうかは,どうでもよい話ともいえるのです(研究者としての評価が高まるわけでもありません)が,一国民としては,きちんとした私たちの提案に向き合ってもらわなければ困るという気持ちが強いです。私たちの提案した法制度をそのまま導入すべきであるといっているわけではなく,そこで示している考え方をふまえて,制度設計の検討をしたほうがよいということなのです。その時期が早ければ早いほど日本の経済にとってプラスになり,後れれば後れるほど,制度導入に混乱と困難が生まれやすくなります。次の参議院選挙の結果次第かもしれませんが,その後のしばらく選挙がない時期に,ポピュリスティックな議論から距離を置いて,解雇法制も改革を進めておくことが必要です。安倍政権のときにも同じような時期があったのですが,政府はうまく制度設計づくりに取り組めませんでした。「解雇イコール労働者への不利益」という固定観念を壊し,金銭解決を労働者の保障制度に組み直すこと,具体的には,企業は十分な金銭補償をすれば解雇できるが,それができないかぎりは解雇してはならないというところがポイントなのです。しかも,労働市場の流動化が進むと,解雇による逸失利益は減り,金銭補償額も低減することになり,そういう方向へと労働市場の構造改革を進めることが必要であるというメッセージも同書には含まれています。解雇法制は,労働市場改革の最も基礎になる部分です。ここにきちんと取り組まなければ,他のところを,どういろいろいじっても大した成果は出ないでしょう。そろそろ政治家や政策担当者は,このことに気づくべきでしょう。厚労省も,労政審とは別に,若手官僚を集めて,現在同省がやっている議論とはまったく別の解雇規制改革プロジェクトを立ち上げてみてはどうでしょうか。若手にとっても,非常にやりがいのある仕事になると思いますが(余計なお世話ですね)。
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