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2022年6月20日 (月)

NTTのテレワーク推進に拍手

 経団連が「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を改訂して,対策をやや緩めたようです。感染状況やウイルスの危険性に関する医学的知見の蓄積に応じて,適宜,改訂するのは必要なことです。一方で,改訂版では,「感染拡大期においては,テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務),時差通勤,ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務),変形労働時間制,週休3日制など,様々な勤務形態や通勤方法の検討を通じ,公共交通機関の混雑緩和を図る。」となっていますが,これらは感染拡大期に限る必要がないというのが私の立場です。
 おそらく経済界は,仕事にかぎらず,なんとか人に移動してもらいたいので,移動に抑制的な内容はできるだけ避けたいということなのでしょう。私は,人々が移動しなくても働けるようにし,移動するのは仕事以外のプライベートな場面に限定されるというような社会が実現しなければならないと考えており,仕事のために移動させられるのは,ちょっと過激に「人権侵害だ」(私は「場所主権」と呼んでいます)と言ったりしています。
 そういうなか,昨日の日本経済新聞に,「NTT,居住地は全国自由に 国内3万人を原則テレワーク―居住地は全国自由に 出社は出張扱い,飛行機も容認」という記事が出ていました。NTTはその前身の電電公社の時代から,労働事件の多い企業という印象がありますが,従業員に場所主権に配慮した勤務スタイルをほんとうに実現していくのであれば,これは一挙に労働面でも優良企業のトップランナーに躍り出るのではないかと思います。たしかに,業種的には,ICTの活用は得意分野でしょう。自らが率先してICTを活用した働き方を実践することにより,他企業に自分たちの提供するサービスを活用してもらえればという狙いもあるのかもしれません。ただ,同紙の別の記事で,「NTT,人材確保に危機感」とあったように,この業界では人材難であり,優秀な人材確保のためには,事業所に出てこいというような働き方では,もはやダメだということでもあります。これは来たるべきDX社会での働き方を先取りしたものでもあります。
 「やっぱり仕事って,みんなで集まってわいわいやるのが最高ね」という人もいるかもしれません。そう言える働き方ができている人は幸せだと思います。ただ,ひょっとすると,それは,知らぬ間に仕事に私生活が乗っ取られ,洗脳されているだけかもしれません。ぜひ拙著の『誰のためのテレワーク?―近未来社会の働き方と法』(明石書店)(とくにその最後に書いている「呪縛からの解放」というところ)を読んでもらえればと思います。

 

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